キスマーク☆パニック―1

『は、初体験っ!?』

「しーっ!声大きいよっ」

『ご、ごめん』

夏休みもあと少しで終わる8月下旬。
学生たちは最後の思い出を作ろう!と、街中は学生たちで溢れ反っている。
私、坂下 結もご多分に漏れず、親友の由里と一緒にカフェで近況報告をしていた。

そこで飛び出した由里の大ニュースである。

『…ねえ由里。首に巻いてるストールってまさか』

「……うん、胸元にキスマークつけられちゃって。だから隠してるの」

そう言って顔を赤らめながら首元のストールをいじる。
「こんな見つけやすい所にするなんて、ひどいよねアイツ」なんて言ってるけど、やっぱり何処か幸せそうで。
…正直言って羨ましいな。

『大人の階段登ったのね…由里。すごい、私にはまだ全然良く分からなくて』

「やだもう結!結だってカッコいい彼氏がいるじゃん!幸村先輩!」

そう。私には付き合って1年半になる彼氏がいる。
私たちが通っている立海大附属高校2年生の幸村精市先輩。
テニス部に所属していて、校内で彼を知らない人はいないというぐらい有名な人だ。
中等部の頃からずっと大好きで、先輩が中学卒業する年のバレンタインデーに告白“された”のがきっかけで交際がスタートした。

でも、それから関係は殆ど進展していない。
キスまでで、いわゆる「一線を越える」経験はしていないのだ。
今までは特に気にしていなかった。
けど、親友である由里までもが初体験を経験したとなれば話は別で、やっぱりそういう話題が気になってきてしまって。

(キスマーク…かぁ)

私は知らなかった。
この時の会話が、あんな事件の発端になるとは。
全く知るよしもなかったんだ。


キスマーク☆パニック


えーと。
私はただいま大ピンチを迎えています。

「おーっす!結!久しぶりだな!元気だったか?」

『お久しぶりです、ブン太先輩』

「幸村とは仲良くやっとるかのう?」

『おかげさまで。たぶん仲良しかと思います』

「ククッ、何じゃ『たぶん』て。相変わらずワケの分からん姫さんじゃの」

由里の初体験報告から数日。
私は今、男子テニス部の新レギュラー陣と海に来ている。
ちなみに“新レギュラー陣”というのは、夏の大会が終わった後の1、2年による新体制のレギュラー陣のことだ。

「明後日、テニス部の連中と海に行くんだけど、一緒に行くかい?」

と彼氏の幸村先輩に言われたのが一昨日の夕方のこと。
部活で忙しくて夏休み中全然デート出来なかったから、幸村先輩の誘いが嬉しくて。二つ返事でOKしたものの、今ではそれを後悔しているのです。

何故かと言うと…

(…やっぱり、消えてない。。)

私の胸元にはキスマークが1つ、キレイに印されていて。
しかも実はこれ、幸村先輩がつけた印“ではない”のだ。

海という開放的なロケーションと水着という開放的な装いだ。このキスマークに気付かない訳ない。

(しかも、幸村先輩に気付かれたら…絶対に誤解される)

果たして私は、無事に今日という日を乗り切る事ができるだろうか…??

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