いっそ屋上に上って、そこからこの身を投げられたらと思った。この子の目の前で、ただ安らかに逝きたいと。
 死んだら星になると言うのなら、私はどこにこの身をおけばいいのだろう。生きている間も、死んでからもそれを悩むのは馬鹿馬鹿しいと思いながら、自分の居場所をただ探している。

 貴弥には悪いと思っている。
 私が逃げた事で残った問題を全て背負ってもらっている。

 そして、目の前にいるこの子にも悪いと思っている。
 どういった意図なのかはわからない。ただ、私の我が儘に付き合ってもらっているという今現在の状況において、少なくとも私はこの子を利用しているのだ。

 もうこれ以上生きていたくないと、どれだけ考えただろう。特別嫌なことがあったワケじゃない。ただ、自分がそこにいることの意味を見出せなかった。周りの人と合わせようとした波長も、私にはノイズでしかなかった。
 頭が痛い、イタイ。私がおかしいのはわかっている。こんな考え方も、人からすれば単なる被害妄想であることも知っている。ただ、それを知っているからこそそう考えてしまう自分が嫌になって、久月憂芽をやめたくなるのだ。
 とてつもない自己嫌悪。時間はループじゃないけど、この感情ばかりは無限ループだ。どこにもこのループを断ち切ってくれる物はない。自分自身の手でこの負の連鎖を断ち切るしかないとわかっていても、それが出来ない。明るく振舞うことも辛いからだ。

 狭い銀シートの上。隣に寝そべるこの子が何を考えているのかには全く興味がなかった。ただそこにある個体に過ぎない。
 この子は、私が何を言っても否定をしない。返答に困るような質問をしたことがないからだろう。何に対しても「無難」を貫き通すその姿が痛々しくもあり、羨ましい部分でもあった。
 この子の幸せを願うなら、まずはこんな場所で拘束をしないこと。ただ、私はこの子がこの先どうなろうと興味がない。何故なら、この交点を過ぎてしまえばもう交わることはないからだ。
 そう言い切ってしまえるのは、例え交わりそうな機会があったとしても、そのとき私が生きているかどうかも怪しいからだ。貴弥はここを「帰ってこれる場所」にしたいと考えているみたいだけど、私に戻る気はない。
 それでも私がここにいたことの証明をしたいと考えて、それを手っ取り早く刻み込むには屋上から身を投げること、それも後輩の目の前でと考える自分が痛々しいと思う。痛々しいと言うのは、その言葉を使うことを嫌われる「気違い」というニュアンス。

 ――もうやめたい。

 考えること、視界に光を入れること、生きること、こんな自分を。
 ただ、目を閉じても月明かりくらいはわかる。諦めざるを得ない。影がある限り、光はついて回るから。さあ、私の居場所を探そうか。

「始めよう、観測会」


(10/11/05)
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