断言の後に後悔
居間に重苦しい空気が漂う。
心なしかカインの表情は悲しそうだった。
それだけじゃない、ユウナやライトニング、バッツたちも同じだ。
おいこら何やってんだその神とやらは。
おま、味方なのに何深刻なことしてくれてんだこの野郎。
心の中で顔も性格も分からない神に向かって悪態を吐き、悲しそうに顔を歪めた子供たちに目を向ける。
ヴァンとオニオンナイトに至っては泣きそうじゃないか。
原因が分かった俺は、自分の身に降り懸かった災難に溜息を吐きたくなったけど、一番辛いのはこの子たちだろうから止めた。
仲間(?)に裏切られた(??)んだ。辛いに決まってる。
しかも見ず知らずの世界に放り出され、身体は子供にされ…特に後者は精神的ダメージが大きいはずだ。
…子供ってお前…ちびっ子ってお前……
ただの嫌がらせじゃないのかそれは。
『事情は分かった…』
よし、と呟いて俺はカインの頭…もとい堅い鎧に手を置く。
所々角張ってる鎧は地味に皮膚に食い込み痛かった。
俺の声に皆は顔を上げ、カインは頭にきた軽い負荷に伏せていた視線を此方に向ける。
皆の瞳が此方に集中したのを確認して、にやりとニヒルな笑みを浮かべた。
『全員が元に戻るまで、俺が面倒見てやる』
まぁ、中身が大人ならそこまで世話はかからないし、生活費も公務員で給料高いから大丈夫だろ。
一番近いオニオンナイトを抱き上げて、皆に優しく笑いかける。
理解するのが遅かったらしく、数秒遅れて見開かれた瞳に更に笑みを濃くしてカインの頭をぽんぽんと撫でた。
「い、いいのか…?」
おそるおそる、といった様子でヴァンが聞き直してくる。
もちろん俺は決めたことは一部除いてきちんと守る性格だから、頷いて今度はヴァンの頭に手を置いた。
『いいんだよ。それに元は大人とはいえ子供を放り出す薄情さは持ち合わせてないからな』
得体の知れない奴だったら放り出すつもりだったけどね!
「っ、やったー!!!!」
『ぐぇ…たま君、痛い』
ヴァンを撫でていた矢先、喜びに震えたオニオンナイトに勢いよく抱き返される。
おかげで顎に頭突きを喰らい、目がチカチカしてヴァンに乗せていた手がずれ、テーブルに落ちた。
落ち着かせようと膝の上ではしゃぐオニオンナイトの頭を押さえれば、ヴァンに伸ばし直していた手を掴まれる。
少しだけ驚いて頭越しに手先を見たら、身を乗り出したラグナが俺の手を握って、嬉しそうに微笑むのが視界に映り込む。
ラグナは小さな両手でぎゅうっと大きな手を握ると、にへらっと笑った。
「◎くんってば良い男だねえ!」
『どうも』
握り返して嬉しそうなラグナに答えた俺は、ライトニングの方へ視線を移す。
彼女は安心した表情だったが、俺と目が合うと微かに眉を顰めそっぽを向いた。
それに気付いたユウナが苦笑いをしてライトニングに話しかけると、俺とは絶対に視線が合わないよう返事を返している。
見知らぬ人に対する当たり前の対応とは思うけど、なんか…可愛くないな。
今は子供なんだから可愛らしく笑えば良いのに。
「◎…すまないが、もう一つ言わなければならないことがあるんだ」
『ん?何だ、言ってみろ』
何処か遠い目でライトニングを見ていた俺は、微かに申し訳なげに言葉を発したカインに振り向く。
表情は濃い紫の鎧で隠れて見えないので分からない。
でも確かに何か言い辛そうな雰囲気を醸し出していた。
「実は…実はオレたちは……」
『うんうん』
途切れ途切れの言葉に耳を傾けていると、突入した際に開けっぱなしにしていた扉の向こうから、…
…………またあの違和感を感じた気がした…
「その、まだなか「なんっだこれうぁああああ!!!!!」!!…仲間がいるんだ…おそらく今また来た」
『………………………………声からして他にも大勢いるみたいだな…』
ぞわりと鳥肌が立った瞬間、本日二度目の絶叫と爆発したような泣き声。
俺は明らかに廊下から聞こえた複数の声―しかもかなり人数の多い気配に、酷い頭痛と生活費の心配に襲われた。
断言の後に後悔
嘘だろ………?
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