物騒な単語






ふわふわと、可愛らしい花が飛んでいる気がした。

それは俺の両サイドから発生して飛び回り花を散らしている。

それぐらい機嫌良くにこにことする二人は繋いだ手をしっかり握っていて、時折俺を見上げてはにへっと笑う。

正確に言うとスコールは無表情だけど、彼もまた微かに笑むと握る手にきゅっと力を込めたりしていた。


可愛いなー…あー…可愛いー…。
苦手だけどな、可愛いものは可愛い。

まさに天国だ。子供は一部を除き皆天使だから。



「よっしゃあっ買い物行っかー!」

『はは、でもちょっとだけ車の中で良い子にしてろよ?』


ぶんぶん腕を振りながら今からはしゃぐラグナにつられて、絶賛癒され中の俺の腕も揺れる。

少々腕の筋が痛かったけど、可愛いから我慢だ我慢。


きちんと着替えて部屋の灯りを消したことを確認した後、三人で部屋を出た。

さて、居間の残り組はどうなってるかな?



『カイン君やウォーリア君たちも行くからな』


たぶん一人だけに決めていると思うけど、果たしてあの様子できちんと決められたのか。



「そうだねぇ…大変なことになってなきゃ良いがな…」

「同感だ」


二人を連れて居間に行くと、廊下には大量の鎧と物騒な武器が散らばりまくっていて、ひくりと頬が引き攣る。

それに加えて両サイドから意味深な会話が聞こえたものだから、俺は無意識に溜息を吐いた。


喧嘩して泣いてたらどうしよう…



『……いざとなったら俺たちだけで行くか』

「「!!」」


仕方ないな…泣いてたら収集つかなさそうだし。

頭痛さえし始めた中、何とか痛みを耐える為にこめかみを押さえて二人に言う。

すると二人はぴくりと反応して、残念そうに…と思いきや嬉しそうに片方の拳を握りしめた。


つまりガッツポーズ。

え?あ、…えぇ??
三人だけが良いのかお前ら、そうかそうかそうなのか。


ぶつぶつと小さな声で呪文らしき単語を呟くスコールと、あからさまに手を合わせて神頼みをするラグナを何とも言えない気分で見つめる。

呆れにも似た感情を抱いたが、子供は一番乗り?したくなるのかと考えると妙に納得がいったから気にしないでおいた。


いったんスコールと手を離し、さぁ、と居間へと繋がる扉の取っ手にかけて、覚悟を決める。


どうか泣いてませんように…!!


「どうか泣いてますよ〜に!」

「………泣いていればいいのにな」

『…君たち』


両サイドから可愛く発せられた酷い願い事に涙が出そうになりました。


―ガチャッ


『ウォーリア君、カイン君?』


少しだけ隙間を開けて泣き声が聞こえないか確認して、とりあえず静かな室内に胸を撫でおろす。

続いてその隙間にすすすっと身を滑り込ませ顔を出せば、室内の状況が目に入った。



「◎、着替えたのか?」

「案外早かったな」


かなり近い距離ですぐに聞こえた二つの声。
皆が座って沈黙しているのを背景に数秒で現れた二人に、吃驚して反射的にラグナの手を強く握ってしまう。

ラグナもスコールも同じように吃驚したらしく、俺の身体で見えない扉の向こうを覗こうとそわそわした。


若干早くなった鼓動を落ち着けつつも、きょとんとした表情で見上げてきたちびっ子二人に問いかける。



『決まったか?』

「……………………あぁ」


鋭い顔つきの竜を象った兜が俯き、暗く返事をしたカイン。

それとは対照的に輝き胸を張って笑む、勝ち誇った表情のウォーリア。


返事はしなかったものの、ふふんとカインを見るウォーリアの姿は、どちらがついて行くかを雄弁に語っていた。



『じゃあ、ウォーリア君行こうか』


一瞬にして悟った俺はこみ上げてきた苦笑を堪え、カインの頭を(何度も言うが痛い)撫でて慰める。

そしてウォーリアの背中に手を回し居間から廊下へと連れて、そわそわしたままのラグナとスコールを対面させた。

かちりと目が合った瞬間、表情が固まったウォーリアに溜息を吐くスコール。



『カイン君、悪いけどお留守番頼むぞ』

「わかった。此処はまかせろ」


ごめんな、一人じゃなくて三人で行くんだなぁこれ。

うげっ、だなんて本音を包み隠さずその一言に込めたラグナを横目に、落ち込み気味のカインに頼む。

するともう気を取り直したのか、格好良く返事をすると俺を送り出してくれた。



「気をつけて行ってくるんだぞ」


めっちゃ頼りがいのある子だな本当。
見上げて来たカインにひらひらと手を振って、妙に感動しながらその場を後にする。

未だに固まっているウォーリアも、はっと意識を取り戻して渋々と三人で行くことを承知してくれた。



「…これならカインも連れてくるべきだったな…」


廊下を歩いて玄関に向かっていると、ウォーリアが眉を潜めて唸るように呟く。

あらかじめ説明してなかったからな…ちょっと悪いことしてしまったか?



『悪いな、…』

「いや、かまわない。ただカインと私で勝負をして…わざわざHP攻撃をするものではなかったのに……」


大人げないことをした、と後悔の念を感じている様子で申し訳なさそうに俯いた。


………HP攻撃ってなんだ…?


理解出来ないが物騒な単語にラグナとスコールを見ると、ぱっと顔を逸らされる。


わかった。
反応を見る限り良い意味の単語じゃないんだな。

でも見た感じ部屋の中は至って普通だったし…大丈夫、だよ…な………?



物騒な単語

ま、まぁ、気にせず買い物に行くとするか!






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