狩り場?







大阪の夜は絶好の狩り場だ。
GANTZに呼ばれて戦う俺にとって、これ以上ないほど点数を稼げる狩り場。

それは俺だけでなく、ここにいる全員に言えることだろう。


…きっと。




「◎ー、良い女おらへん?」


星人を犯しながら俺に聞いてくる桑原や



「薬キメたときより気持ちよーなれるような強そーなやつおらへんかった。◎でええわ、ちょいこっち来てえ」


星人のやけにカラフルな血に塗れた瞳孔開きっぱなしの京や



「ピンポンやりたいわあ」


元・卓球部らしい岡もその他牛丼屋二名や銀行員やドS3人組エトセトラもきっと、そのはず。



―星人との殺し合いの最中なのに、ハッパや薬をキメてたり、星人を犯している時点でおかしなことがいっぱいだが、きっとそうなんだ。そうだ。それしかない。こんなふざけた奴らでも戦ってる時は凄いんだ。



「あーっ、こいつあんま、よくないわ。なあ、他の女はおらへんのか」

「◎、無視はあかんで。俺と遊ぼーや」

「ピンポンより久々に空手もええかもなあ」


そう必死に考えてみるが、三方向からかかる呑気な声に、冗談抜きで、頭の血管が破裂しそうで、我ながら気が気でない。



いや、ただ声をかけるならまだいい。こんなにもキレない。

だが、敢えて言おう。
一人はヤリながら、一人は人目でヤク中とわかるふらふらとした足取りで此方に来ながら、最後の一人は隣で俺の肩に腕を乗せながら―耐えられるか?

馬鹿じゃないかこいつ等。いや馬鹿だ。ふざけてやがる。



『…真面目に戦え』


低く唸るように呟けば、思ったより怒りを含んだ自分の声が吐き出される。

べったりと頬についた返り血を拭いつつも、目の前の自由奔放な奴らにいい加減腹が立って限界だったんだろう、まあいいやと思って気にせず三人を睨みつけた。

桑原と京、岡以外はぎゃあぎゃあ騒ぎながら死にかけの星人で遊んだり、死骸との記念撮影に明け暮れている。

ガンツスーツ壊れて先に死んでしまえ。腹立たしいことこの上ない。



「なんや、怒ってる?」


真っ暗な空によく映える街灯の明かりさえ煩わしくて、思い切り表情を歪めた俺の低い声は、きちんと三人に届いたようだ。

きょとんとした顔が三つ、綺麗に此方を向く。相変わらず桑原の腰は止まらないが。



「ん?珍しいやん。◎怒っとるんか」

「美人が、台無しやで」

『…………………………』


のんびりと笑う岡の大きな手がぐしゃぐしゃと俺の髪をかき乱す。
桑原は笑いを含んだ声で誉めてるのかよくわからないことを言ってくる。
京は俺の前で首を傾げて顔を覗き込んだり、おーいと手を振って異常がないか調べている。失礼な。


とりあえず岡の手を振り払って、かなり距離が近い京からは離れ、桑原が犯している星人をぎょーんと一発撃っておいた。


あッいいとこだったのに!黙れ絶倫しね。

突然爆ぜて肉片と貸した星人に目を見開いた桑原に吐き捨てれば、ふてくされた表情で俺を恨めしそうに睨んできた。



『汚いもん見せるな、しまえ』


全裸で。


「◎が代わりに相手してくれたら、しまったる」


星人の体液でべとべとになった股間を元気よくぶらぶらさせながら近づいてきた桑原には、京がXガンをぶちかました。もちろん、手加減はした、…よな?

容赦なく股間へ向けて撃った気もするが、避けて無傷な桑原を見る限り、まあ、手加減はしたんだろう。


ヤク中にあるまじきやけに据わった眼孔で桑原を睨みつける京の横顔はなかなか迫力があった。

思わず、ひくりと頬を引き攣らせていると、くすり、と岡が笑った気がして、隣へ目を向ける。



「ほんま、◎は好かれとるな」

『はあ……男に好かれても嬉しくないよ。岡も男に好かれる自分を想像してみろ』

「うげェッ!!キモいこと言うなや!まあ◎なら歓迎やけどな…桑原や京はキモいわ〜」


俺もキモいわ。
顔を歪めて吐き気をこらえる岡は、癖のある髪を両手でぼりぼりと掻き毟って、悪寒に耐えているようだ。



「◎、もうえーから、ほら、ヤク代わりになって」

「◎ー、女の代わりしてくれるんやろ、ほら、舐めるだけで―エエッ!!!?京おまっ、俺のちんこ無くなったらどうすんや!」

「無くなればええやん。◎に手え出すな」

「なんやてえ!!?」


ぎょーん、ぎょーん、ぎょーん、どかん!
間抜けな音と酷い破壊音が断続的に繰り返され始めて、何故か星人を狩るはずなのに仲間同士で殺し合いを始めた桑原と京に、頭痛を覚えた。



『岡、俺帰っていい?』

「とりあえず、星人、全部殺してからやないと無理ちゃうか?」


労るようにまた頭を撫でてきた岡の手に、心なしか目頭が熱くなって涙が滲んできた気がする。


絶好の狩り場、夜の大阪で点数を稼ぐことを目的として全員、戦っているはずなのに、本来の目的を忘れてやしないか?



『もう疲れた…さっさと点数稼いで帰りたい……』


俺の呆れ半分涙半分の声は、鬼気迫る様子で銃撃戦をする(桑原は未だ全裸だ)二人に届くことはなく。

がっくりと肩を落とした俺をぽんぽんと叩いて慰める岡にしか、聞こえなかった。





『ガンツ!俺だけ先に転送しろ!!』

「まあまあ。…ほな、邪魔者二人消えたから俺と一緒に遊ぼうな」

『はっ?岡、ちょっ、まてまてま、ぎゃああああああ!!!』

「「ッッッオイコラアァアアアアッッッ!!!」」




Fin.



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