双竜、男と酒場へ入る





星の小川〈スタークリーク〉はとある所を除けば至って普通の酒場だった。



「……客がいないな」

「本当にここで合ってるのかよ…依頼主は何処だ?」

「確か依頼主は店主だったが…それより」


(((中 も ボ ロ ッ)))



そう、扉を開けた瞬間、彼らが思わず顔を引き攣らせるほど酒場は酷く寂れていた。


入ることすら躊躇うほど店内は静まりかえっており、勿論がらりとしたその空間に客は1人もいない。

こわごわと店内に足を踏み入れた三人の瞳に映ったのは、粉塵が舞う薄暗い無人のカウンターとぼろぼろに朽ちたテーブルや椅子。



此処が待ち合わせ場所など、誰が考えられるのだろうか。

少なくとも三人は此処で合っているのだと考えたくもないと思っていた。



「おい、誰かいないのか?」

「…………気配もないな」

「帰ろーぜェ、誰もいねぇよこんなボロ酒場」


床に転がっていた空の酒瓶を蹴り飛ばし、つまらなさそうに唇を尖らせたスティングが二人に呼びかける。

転がっていった酒瓶は心許ない音を立てながら店の入り口へと向かう。



「店主もいないのか?」

「いや、そんなわけは……うーん、おかしいな」


ローグと◎は顔を見合わせて首を傾げる。

スティングは二人の様子に肩をすくませると、倒れていたテーブルを蹴り上げて立たせ、そこにどっかりと腰を下ろした。



彼が蹴り上げた酒瓶を拾い上げ、店内を見つめる者がいるとも知らずに。



「おい!誰かいねぇのかよ!!」

「―いらっしゃいませ」

「ッッおぉう!!?」


三人の顔が一斉に背後に向けられる。
てっきり自分たち以外誰もいないと思っていた彼らは、入り口に佇んでいた第三者に身構えた。



「店員か?」


眉を顰めて問いかけた◎に、ところどころほつれた服を着ていた男が申し訳なさそうに答える。



「はい。ちょっと買い物に出ていました…私、ここのマスターをしております者です」



慌てたスティングが勢いよくテーブルから飛び降りた音が、閑散とした空間によく響いた。





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