双竜、男と町に行く
汽車から降りてすぐに復活したローグ。
そして気絶したままのスティングを引きずっていた◎。
目覚めたスティングが怒髪天を衝くのに十分なほど、2人は彼をぞんざいに扱っていた。
「拗ねるな、スティング」
「拗ねてねェよ。つか◎、俺に謝れ!」
「乗り物酔いに弱いお前を可哀想に思って眠らせてやったんだぞ?逆に感謝して欲しいぐらいだ、ゲロ野郎」
「上等じゃねぇか!根暗野郎!!」
彼らがたどり着いた場所は、ロギーという寂れた町だった。
閑散としてあまり賑やかではないその町の中心で騒ぐ2人は、迷惑極まりない騒音そのものだ。
依頼人が待っている場所に行かなければならないというのに、ドラゴンフォースを発動させそうなスティングと背後にドス黒いオーラを纏った◎は額を合わせて睨み合う。
相変わらず喧嘩ばかりの2人に最早慣れていたローグは、溜息を吐くだけで何も言いはしない。
さっさと待ち合わせの場所に行こうと1人歩き始めたローグの背を、火花を散らし合いながら何だかんだでついていく2人。
背後から聞こえる一向に止まない騒ぎ声に、彼はまた溜息を吐いた。
「ここが待ち合わせ場所か…?」
依頼書を片手に目の前の建物を見上げた◎の口元が、ひくりと引き攣る。
「…間違ってないよな」
「つーかボロッ…!」
「スティング。間違っても店員の前で言うなよ」
口々に感想を言う彼らの瞳に移るのは、この町にぴったりとも言える一際寂れた小さな酒場。
―星の小川〈スタークリーク〉―
所々剥がれかけている看板に書かれた文字を確認し、◎は何度か目を瞬かせる。
スティングも◎の手にある依頼書を覗き込み、記載された待ち合わせ場所を見ては目の前の酒場に向き直り、視線を行ったり来たりさせていた。
「「ぼ、ボロい…………」」
「……………………………」
呆然とする2人の後ろで、ローグは怪訝な様子で酒場を睨む。
口元に手を添え考え込む彼の胸には不信感が募っていた。
ここロギーについてから、暫くさまよっていた3人。
だが彼らは、その間に誰とも擦れ違っていない。
つまり、人っ子1人、この町にはいなかった。
人の気配は感じるものの、誰も外に出ていない町。
寂れているという理由だけではあまりにも不自然だ。
―そう思いながら、ローグは警戒心を強める。
「……スティング、◎。さっさと入るぞ」
「押して大丈夫か?扉壊れんじゃねぇ?」
「壊れたとしても俺たちの所為じゃない…!」
その一方で、暢気なスティングと◎は相も変わらず酒場の見窄らしさに驚いていた。
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