ガチャリ、と扉が開く音がした。勝手に扉が開くなんて事はないはずだ。
泥棒だろうか、と用心して玄関へ向かうとそこには。

「…幽?」

「急にごめん、兄さん」

ああ、そう言えば幽には合いカギを渡したんだった。とふと思った。
ここは静雄のアパートの一室。静雄は弟の幽を椅子に座らせると冷蔵庫から牛乳を取り出す。

「お前よ、せめてインターホンぐらい鳴らせよな。驚いただろうが」

「兄さんが今日非番だなんて思わなくて。ごめん、兄さん」

「まぁ…いいけどよ」

会えてよかったし。と、静雄は牛乳を片手にニコリと微笑む。
そこで幽が何かを思い出したように自身の鞄の中を漁りだした。何だろうと思っていると、そこから出てきたのは少量のお菓子。
撮影現場の人たちから貰ったんだ、と幽は静雄にお菓子を差し出す。
幽は静雄が甘い物が好きなのを知っていたのだ。静雄はお菓子を受け取ると紙包みを開け小さな砂糖菓子を口へ放り投げる。

「ん、甘い」

「疲れた時には甘い物を食べると良いって聞いたから。良かった」

数分、沈黙が続く。こう見えて二人は兄弟なのだが、何分会うのが久しぶりなのだ。
静雄は借金の取り立て、幽はドラマや映画の撮影で各地を飛び回る仕事が多い。
基本は都内で撮影するのだが、今回は海外の撮影だったため中々会えなかったのだ。

「あー…その、仕事の方はどぅ、………、??」

「どうしたの兄さん」

「な、んか…暑く、ないか?」

「俺は暑くないけど」

「そうか…俺だけか?」

「熱でもあるんじゃないのかな」

そう言って幽は自分の手のひらを静雄の額に当てる。その時に少し触れただけなのに静雄の身体は甘い声を上げ打ち上げられた魚のようにビクンと震えた。
思ってもいない突然の反応。静雄も幽も互いに驚き顔を見合わせる。

「あ、いや…これは、その…」

「…嗚呼、もう効くんだ」

「え…」

「ごめん兄さん。さっきのお菓子にちょっと混ぜちゃった」

「混ぜ、たって…何を…」

「媚薬」

弟の口から聞く事は無いだろうと思っていた言葉。それなら身体が熱く高ぶる理由も分かる、なんて考える余裕もいいところだ。
徐々にその熱は思考を消し去っていく。熱い、熱い。この熱を吐き出したい。
ああ、助けて。

「兄さん」

「ぁ…かすか、ぁ…」

「襲っていい?」

「き、聞くな、よ…!」

「その返事は良いって事だよね。可愛い、兄さん」

ニコリと微笑むと、幽はゆっくり静雄の身体を押し倒した。



♂♀



「あ、ぁ、あッ!や、ンぁ!」

一度達しても冷めない熱。ああ、苦しい。助けを求めるように幽の背に腕を回し抱きつく静雄。
揺さぶられ、中に欲を吐き出される。何度やっても慣れないこの行為。
愛されていると感じるのだが、どうも自分の意志を保てない。こんな女のような声は出来れば出したくない。
けれど聞かせてくれと言われたら、口を塞ぐわけにはいかない。求められているのだ。
こんな自分が。実の弟に。

「ゃ、ぁン!あ、ひぅッ!ァ、幽、…かすかぁ…!おれ、…また、イく…!」

「…また?兄さん、淫乱だね」

「ひゃ、あ!ンんぅーッ!!」

だってこれは薬のせいなのに。そう声を上げたくても、心の中で呟くだけで音にはならない。
色を無くした精液はダラダラと腹の上に溜まり続ける。揺さぶる度に身体を伝いシーツへ染み込んでいく。
出しても出しても、身体に巣食う熱は消えない。

「ぁあ!ひ、あ…!ゃッ…か、すかぁ…ッ、こ、わぃ…!」

このまま熱が引かないんじゃないかって、すごく怖い。ボロボロと涙を流す静雄を見て、流石の幽も少々驚いた。
兄に怖いものがあるなんて、思ってもいなかった。幽は優しく静雄の頭を撫でる。

「ごめんね兄さん。ちょっと薬、強かったかな」

「ん、ん…ッ!も、…たすけ、て…くれ」

「俺、解毒剤持ってないんだ。だから、熱が冷めるまで俺が付き合ってあげる」

「へ、…?ァあ!な、ん…!ゃあ、んッ、…幽…ッ!」

「こうやってしか、俺は兄さんを助けてあげられないんだ。ごめんね。次はちゃんとしたの探すから」

そんなモノ探さなくていい…!目でそう訴えても幽はただ小さく微笑むだけだった。
ああ、そんな顔もカッコイイ、なんて。久しぶりに会ったんだ。少しは付き合ってやってもいいかな、と静雄は思う。
覆いかぶさってきた幽の身体に静雄は腕を回し、強く、けして壊してしまわぬようにそっと抱き締めた。

(ああ、俺もとことん幽に甘いな)

熱が冷めたのはそれから三時間後の事だった。



(幽…もう薬とか…盛るな)
(なんで)
(なんでって…べ、別にそんなもの使わなくても…俺は、求められたら…その…応える、し…)
(兄さん…)
(あ、で、でも!たまにだぞ!たまに!)
(じゃあ今ヤろう?)
(な!今の話聞いてたか!?しかもついさっきヤったばっかだろうが…!)
(求められたら応えるって兄さんが言ったんだよ)
(たまにだって付け加えただろうが!あ、やッ、馬鹿!押し倒すな…!)

――――――
堕落様!長らくお待たせしましたすいません!
『静雄に久々に会った幽が媚薬を盛ってヤっちゃう』的なリクだったのですが…!
裏が極端に少 な い…!!前振りが長いんだよ私のおバカ…!
そしていつも通りグダグダ…!ああああああ、ごめんなさい…!
毎日通っていただいて嬉しいです…!Stk、バッチ恋…!←

リクエストありがとうございました!今度ともご贔屓に!


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