「だーかーら、ジュトは馬鹿だってんだ!」

宿屋にて、少年の声が響き渡る。少年の名はクロセル。
クロセルの前には腕を怪我した青年、ジュトの姿。ジュトはクロセルと打って変わってムスッとした表情で目を閉じていた。
そんな事も知らずにクロセルはジュトに罵声を浴びせ続ける。

「そんなデカイ図体してっから簡単に怪我なんかするんだ。俺様みたいに小柄で素早く…」

「クロセルはちっさいからなー。魔物の視界にも入ってないなんて、可哀相にな。いつか踏み潰されるんじゃないか?」

「…なんだと?」

「なんだよ」

いつしか二人の周りは相容れない雰囲気が漂う。セレスティンはそんな二人の様子を影からこっそり覗いていた。
ジュトの怪我の具合を見ようと来ただけなのに、まさかこんな場面に出くわすなんて…。
クロセルはいつものようにジュトをからかっていただけなのに、ジュトはそんなクロセルの言葉を真に受けてしまったのだ。

「クロセルはチビだと思ってたけど、頭の中までちっさいんだな」

「言わせておけば、燃やしてやろうか、てめぇ」

「はッ、やってみろよ、オチビくん」

「わ、わ、ダ、ダメだヨー!二人とも落ち着いテ!」

このままでは宿屋が暴発する。セレスティンはそう思い思わず飛び出した。二人の間に入るとワタワタとし出す。
クロセルは怒りが収まらないのか、苛々としているのがオーラとして現れている。
ジュトはセレスティンに抱きつかれて動くに動けない状態。そんな二人を見てクロセルは小さく舌打ちをすると宿屋を出て行った。


*****


「ち、…ジュトのやつ…」

本当は心配していたんだ。だけど、自分はそんな素直に言える性格でもないし。
ああ、なんであんな事言ったんだろう。勝手に宿を飛び出した自分としては今更戻るのは癪だし。
そんな事を考えながらクロセルはトボトボと街中を歩く。そろそろ日も落ちる頃だ。
戻らないとゼフィが心配するかもしれない。困らせてしまう、と思っていながらも足はどんどん宿屋から離れていく。
ふと見つけたベンチ。そっとそこに腰掛ける。少し肌寒い。
少し頭を整理してから戻ろう。それから、ちゃんと謝るんだ。酷い事言ってごめん、って。
うとうと、と頭が垂れ始めるクロセル。連戦続きでちゃんとした睡眠を取っていなかったのだ。
その為に立ち寄った宿屋なのに。なんて自分はついていないんだろう。そんな事を想いながらクロセルは襲いかかる睡魔に負け、目を閉じた。


*****

一方ジュトは中々帰ってこないクロセルを心配して宿屋を飛び出していた。
半分は無理矢理セレスティンが行かせたようなものだけれど。それでも多少焦っていた。
いくら街中とはいえいつ魔物は出るか分からない。それを除いてももクロセルは男の子にしては少々可憐すぎるから襲われてはいないだろうかと心配になる。
自分だってあの時あんなに言うつもりはなかったのだ。あの時は気分が悪かったせいもあるのだが、それを理由にしてはいけない。
ちゃんと謝らなければ。急いで街中を探せば見知ったオレンジ色の服。
ベンチにもたれ掛かるようにして、眠っていた。ああ、良かったと胸を撫で下ろすと、クロセルに声を掛けた。

「おい、起きろって。このままココにいたら風邪引くぞ」

「ん、ぅ…、は?ジュ、ト…?」

「…ほら、帰るぞ」

差し出された手を思わずポカンと見つめてしまう。差し出した本人の顔は真っ赤に染まっており、思わず笑ってしまった。

「な、何笑ってんだよ…!」

「だってよ、お前の顔茹でダコみてぇ!あはは!」

「そ、そんなに笑うなよ!…い、いいから、帰るぞ!」

ジュトはクロセルの腕を無理矢理掴むと宿屋へ向かって歩きだした。
繋いだ手のひらから伝わる体温がとても温かかった。宿屋へ向かう途中、ジュトがボソリと呟いた。

「ひ、昼間の事…言いすぎた。悪かったな」

「え…あ、…俺も、その…調子乗っちまって…ごめん」

クロセルにしては珍しく謝るんだなぁとジュトは驚いた。彼はそんな性格には見えなかったから。
でも、いつまでも子供じゃないんだなとクスクスと笑った。謝るんだったら自分からじゃないと駄目だと思ったし、
どうせ憎まれ口を叩かれるんだろうと思っていたものだからジュトの驚きはハンパじゃない。

「じゃ、これで仲直りだな!」

そういって笑うものだから、クロセルは何も言い返せなかった。その顔はとても嬉しそうで。
本当に心から嬉しそうな顔だったのだ。クロセルは赤くなった顔を伏せたまま、ジュトに手を引かれ宿屋へ戻った。

翌日。

「まったく、ジュトもジュトだよなぁ…あんな罠に引っ掛かってよ!」

「な、なんだと!俺だって精一杯頑張ってるんだよ!」

(あわわわワ!また二人とも喧嘩してるヨ!ど、どうしよウ!)

セレスティンが思わず止めに入ろうとしたその時。ドッと二人から笑い声が漏れだした。
何がおかしいのか分からないが、楽しそうに二人とも笑っている。何がなんだか分からないセレスティンはただただ唖然とするばかり。
けれど、

(二人ともとっても楽しそウ!でも、それならそれで、いいよネ!)



君と僕とでまわる地球さ!

―――――
大変お待たせしました壱姉さま!!
リンレンの『ジェミニ』PVのようなジュクロとリクを頂いたんですが…!
途中から妹にDIVAを取られるという失態と犯してしまったものですから色々中途半端で…!
ああああ、すみませんんんん!壱姉さまリクエストありがとございます!

こんな作品で良かったらどうぞ!ありがとうございました!!

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