手を繋ぐ度に愛されていると感じるのは昔から変わらない。
弟の幽と手を繋いで歩くたびそう感じる。
まだ幼かった頃は、俺の力が恐ろしいのか誰も近寄ってこなかった。
独りだって、平気だ。独りの方が他人に気を使わなくていいし。
何をするのも自分の勝手だ。だからきっとこれからもずっと独りなんだろうと思っていた。

それはいつものように学校が終わったから独りで家路に向かっていた時の事。
弟の幽は隣にいない。友達に遊びに誘われたらしく、先に帰っててくれと言われたからだ。
幽は、俺と違ってこんな変な力はない。
今までは幽が俺の隣にいたけれど、きっといつかは離れて行ってしまうのだろう。
ちょっと悲しかったけど、それは仕方のない事だ。
だって幽は俺と違って普通の人間なんだから。だから、俺が我慢すればいい。
そうすれば誰も悲しまないし、俺の事を怖がらない。幽にも迷惑は掛らないだろうから。
きっと大丈夫だ。
俺はバケモノだから、誰にも愛されないし。愛されたいとは思うけれど、愛されないんだから仕方ない。
そう、ずっとずっと心の中に秘めていた。
もしかしたら諦めていたのかもしれない。俺は所詮バケモノだから愛されない、と。

通学路である公園では近所の子供が愉しそうに遊んでいる。
俺も一緒に遊びたい。けど、そんな事をしたら誰かが怪我をするかもしれない。
出来るだけ眼を合わせないように下を向いて歩く。
愉しそうに遊ぶ光景を見ていたら涙が出そうだったから。泣いちゃだめだ。
ほら、息を飲む音が聞こえる。大人が小さく悲鳴を上げる声も聞こえる。
怖がってる。俺が居るだけで怖がってる。
ねぇ、俺って生まれてきちゃいけなかったのかな。誰か教えて。
ぎゅう、っとランドセルを握って歩く。寂しい。
独りって、こんなに寂しかったんだ。大丈夫。こんなに胸が痛いのも、すぐ慣れるさ。大丈夫だ。

「にいさん」

ふと、後から声がした。振り返ればそこには友達を遊んでくると言っていた弟の姿。

「かすか…?お前、友達と遊んでくるって…」

「やっぱり止めた。だって、あの子達にいさんの悪口しか言わないんだ」

だから、止めた。
そう言ってくる弟に思わず泣き出しそうになった。泣いちゃ、駄目だろ。
俺はお兄ちゃんなんだから。

「俺に気にせず遊んでくればよかったのに。悪口なんて、俺は気にしないし…」

「嘘」

「………?」

「にいさん、泣きそうな顔してる」

そう言って幽は俺の頭を撫でる。また泣きそうになった。

「…ごめんな」

「なんで謝るの」

俺が弱いから。俺のせいで幽にまで気を使わせてる。
俺はお兄ちゃんなのに。幽を守らないといけないはずなのに。
俺、幽に守られてる。情けないな。

「一緒に帰ろう?」

「…ああ」

ぎゅう、と手を繋ぐ。ああ、やっぱり幽が隣に居ないと駄目だ。
俺、もっと強くなるから。だからそれまでは少しだけお前に甘えてもいいかな。

「にいさん」

「どうした?」

「他の人が何を言っても、俺はにいさんが好きだから」

「…ああ。俺も幽が好きだよ」

「俺はこの先一生にいさんの事キライになんかならない」

「お、大げさだな…」

クスクスと笑うと、幽も小さく笑った。嘘じゃないから、と幽は少し怒ったような感じで言った。
分かってる。幽は嘘なんか吐かない。嘘を吐いてるのは俺の方だ。
独りでもいいなんて嘘。ホントは寂しくて泣きそうなんだ。

「幽」

「なに」

「大好きだぞ」

だからこれからもずっと一緒に居てくれよ。
俺がそう言うと幽は少し驚いた顔をした後クスリと笑って、言った。

「俺の方がにいさんの事好きなんだよ。だから離れるわけない」

ぎゅう、と手を繋ぐ力が強くなった。俺も壊さないように幽の手を握る。
どうかこのままずっと一緒に手を繋いで居られますように。



この感情が愛だと気付くのはもう少し後のお話…――

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幽静幽っぽくしたかったんだが…。うーん、駄目だったか…。

『Aコース』様よりお題をお借りしました。

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