Clap
返信は365にて


 体液で汚れた頬を適当に洗い流す。
 おかしいなぁ、以前はこんな習慣なかったのに。あれ、なんでこんな事やってるんでしたっけ? 自らの行動に首を傾げて、ふと思い出す花が咲くような笑顔。
 そうだ、しえみが悲しむからだ。
 
 彼女のことを思うと心がふわふわします。



「ただいま」

 物質界の家はとても狭い。玄関だって僕がジャンプしたら天井に届いてしまう。しかも脆い。でも僕は壊したりしません。しえみが泣きそうな顔をするから。

「あっ。アマイモン君おかえり!」

 可愛いな。白い肌がTシャツの袖から伸びていて、おたまという物を握っている。会った頃よりは伸びた背でも、僕の身長は越せません。なんたって僕は王様ですからね。習った通り手を洗って、しえみを抱きしめる。いい匂いだ。幸せってこういう事かな。虚無界にいた頃よりは家に帰るのが楽しい。
 
「ああああ、アマイモン君! ご飯、ご飯食べようよ!」

「しえみは僕とハグするのは嫌いですか?」
 
 それと僕の名前はそんなに“あ”は要りません。一個だけですよ。

「嫌いじゃないよ! むしろ好きだけど、ってそういう事じゃなくてね、あの」

 ぎゅう。食べちゃいたい。
 しえみの細い身体から心臓の音が聞こえる度に本能が疼く。しえみは人間。僕は悪魔。だから食べちゃいたくなるのは仕方ないんです。でも、食べちゃったらいなくなっちゃうから、食べません。我慢するんです。うん。

「……ご飯、食べたい」

 これ以上抱き締めていたらしえみを食べたくなっちゃうから、パッと手を離した。冷たいままの身体が少し暖まったような錯覚に惑わされる。そんな事、ないのに。
 真っ赤になって頷くしえみは、風邪をひいたのだろうか。嫌だな、そんなの。お菓子が好きだけど、しえみが作る料理が今は一番好き。だから、風邪を引いてご飯を作ってくれなくなるのは悲しい。

 今日のご飯は、僕の大好きなハンバーグだった。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -