時は限りなく | ナノ


11

「どう思う?」

そんな素朴な疑問が飛ぶが、答えに困る質問だ。

「どう思うって……」
「どう思えばいいんだよ…… おれはてっきりクジラに飲み込まれたつもりでいたが」
「私も、そう思った」

まるで夢だ。雲の浮かぶ青い空が広がり、目の前に島と家があるなど。

しかしならば、悪い夢だろう。
なにせ、急に現れた大王イカを、その島から飛んできたモリが一撃で仕留めたのだから。

「人は居るみてェだな」
「人だといいな」
「と……ところでルフィはどこ行ったんだ!?」
「もうイヤ、帰りたい」
「私、助ける船、間違えたかな」

そして出てきたのは、一輪の花、いや、一人の老人だった。



結局、やはり今ニーナ達が居るのはクジラの胃の中であり、青い海と白い雲は老人、クロッカスの遊び心による絵だということが判明した。
そして唐突にこの胃液の海が揺れ始めたのは、このクジラがレッドラインに頭をぶつけ始めたからということも。

「謎が解けたらさっさとここ出るぞ。ボヤボヤしてるとおれ達の方が溶けちまう」
「まァ捕鯨をとやかく言う気はねェし、クジラを助ける義理もねェ。脱出しよう」

荒れる胃液の中、必死に船を出口へ向かって動かしていると。

ドカーン、という音と悲鳴とともに、三人の人影が出口から飛び出してきた。

「えっ!三人?」

一人はルフィだが、あとの二人は全く見覚えがない。

「よォ!みんな無事だったのか!とりあえず助けてくれ」
「ひとまずルフィを引き上げる」

そうこうしている内に、いつの間にかクジラが大人しくなっている。
その間に、新たに現れた二人をどうしようかとルフィ達が囲んでいると。

「私の目が黒いうちは、ラブーンには指一本触れさせんぞ」
「だが我々はもうクジラの腹の中…… この胃袋に風穴を開けることだって出来るぞ!!」

戻ってきたクロッカスが叫ぶと同時に、怪しい二人組が持っていたバズーカを構え、躊躇なく撃ち放ったのだ。

「ゴロツキが……!」

が、その砲弾をクロッカスが体を張って受け止める。

「あのおっさん、自分から弾を……!」

それでも尚バズーカを放とうとする二人組。だが、二発目を打ち込む瞬間。
ガンッ!と小気味良い音が響いた。

「何となく殴っといた!!」
「………」



***



結局、本当に捕鯨をしていたのはあの二人組で、クロッカスはこのクジラ、ラブーンを守っている医者だったようだ。
その後、クジラの胃を出た船で、謎の二人組、Mr.9とミス・ウェンズデーというらしい、が放り投げられると、鮮やかな泳ぎでまた捕鯨に来ると宣言しながら泳ぎ去っていった。

「……このグランドラインを泳いでくなんて」

大丈夫だろうか、と若干心配になるが。

しかし、その後に聞かされたラブーンの50年前の約束の話で、二人組の存在など頭から吹き飛んだ。

「ずいぶん待たせるんだなー、その海賊達も」
「バーカ。ここはグランドラインだぞ」

50年。仲間の海賊達の帰りを信じて待つラブーンだが、サンジの言う通り、この海で50年帰らないということはそういう事だろう。

「だが、事実は想像よりも残酷なものだ…… 彼らは逃げ出したのだ」

この過酷な海に耐えきれず、約束など忘れてその海賊達はカームベルトを目指したという。
それがグランドラインだ、と語るクロッカスの言葉は、きっと正しいのだろう。幾ら残酷だと言っても、ここがどういう海か、知る前と知った後では、何もかもが違ってしまう。


「うおおおおお」

悲しげな空気を打ち破ったのは、ルフィの気合いの篭った声だった。

「ゴムゴムのォォォォ、“生け花”!!!」

「……ありゃマストじゃねェか?」
「おれ達の船の」
「そうメインマストだ」
「ラブーンに……挿し、た…?」

当然、痛みを訴えるようにラブーンが暴れ始めた。

『何やっとんじゃ、お前〜〜っ!!』

全員が突っ込む声など聞こえる筈もなく、ルフィとラブーンの攻撃が続く。
が、

「引き分けだ!! おれは強いだろうが!!」
「………?」
「おれ達がグランドラインを一周したらまたお前に会いに来るから、そしたらまたケンカしよう!!」

今度のラブーンの声は、初めて聞く、嬉しそうな鳴き声だった。

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