ハッピーエンドの予感

 俺が彼女の秘密を知ってしまったのは偶然ではなく必然だったに違いない。

 俺たち104期より3期上の、気だての良い優しい先輩であるなまえさんは、普段から新兵の面倒をよく見てくれていた。その優しい笑顔に浮き足立つ同期の男共も少なくなく、俺も例に漏れずその中の一人になった。なまえさんへの淡い恋心をまだ自覚することなく、妙にそわそわした気持ちで、毎日を過ごしていた頃――

 彼女を目で追うようになるうちに初めに感じたのは些細な違和感だった。人類最強であるリヴァイ兵士長のなまえさんに対する態度だ。
 同じ班に所属するわけでもなく、なまえさんの実績だって調査兵団の中では正直パッとしない。接点のなさそうな二人が、やけに親しげで、特にリヴァイ兵長から彼女の身体にさりげなく触れたり、彼女を見る視線が妙に色めいているのだ。
 そしてそれは兵長だけではなく、この兵団を率いるエルヴィン団長からも感じた。団長がなまえさんに見せる表情は普段他の兵士に向けられる厳しい顔とは違っている。
 104期生だけでなく、いろんな人にモテるんだ、ぐらいに考えていた俺が現実を突きつけられるのは、それから間もなくのことだった。
 その日の夕方頃団長室に呼び出されたなまえさんが、いつまで経っても帰ってこなかった。団長室から出てくるなまえさんを確認したのは、深夜、それも早朝近くなってからだ。ドアまで出て見送る団長の意味ありげな視線に、どういうわけか兵長がなまえさんの身体を支えるようにして付き添っている。
 ただならぬ関係を瞬時に感じ取った。

 決定的な瞬間を目撃する機会はすぐにやってきた。やはり夜半過ぎに団長室へ入る兵長となまえさんを確認した後、その部屋に侵入し、覗き見る。

「ん、……あっ」

 そのいやらしい声に背筋にぞくりとする感覚が沸き起こる。ある程度予想していたこととはいえ、脳がクラクラするような衝撃を感じた。
 二人の男に組み敷かれる、なまえさんの姿。薄明かりに晒されたその白い裸体そのものよりも、上と下を二人に貫かれているその事実に心ならずも興奮する。しかし、次の瞬間に湧いたのは、怒りとも、悲しみともつかない感情だった。
 ――こんなこと、異常だ。きっと強要されているに違いない。なまえさんは本当はこんなこと望んでいない筈だ。俺がこのことを知ったことには意味がある。それは、そう、きっとなまえさんを助けるためだ。



 翌日、俺は相談があると言ってなまえさんを人気の少ない兵舎のリネン室に呼び出した。

「エレン君、相談って何?」

 彼女は狭いリネン室に何の警戒もなく入っていった。普段から後輩たちからいろんな相談を受けることが多いから、こんな状況はよくあることなのだろう。彼女より後に入り、後ろ手にそっと鍵を掛ける俺の様子にも気付かない。あどけない顔で首を傾げて柔らかく微笑む彼女に、俺は単刀直入に言った。

「俺、昨日見ちゃったんです。……なまえさんが、団長と兵長に犯されてるとこ」

 彼女は大きな瞳をさらに見開くと、表情がみるみる強張っていった。小さく唇を噛み、少し震えているようにも見える。

「ありえないですよね、あんなの。なまえさんが無理矢理されてるなんて、俺、黙ってられなくて……」
「……ありえない、かな?」
「え……?」

 人形のように冷たい眼差しを向けながら、彼女は俺に諭すように、落ち着いた口調で話した。団長と兵長に対する純粋な恋心。こんな関係でも満足しているということ。

「……嘘だ。そんなの、おかしいだろ」
「ふふ、そうだね。でもこの世界がおかしいんだから、多少おかしくたって……」

 淡い幻想が砕かれたというのに、不思議とショックは大きくなかった。本当のところどちらだって、多分俺のしたいことは一つだけなんだから。

「そうか、こんな狂った世界だから、俺のやることがちょっとくらい狂ってたって、別になにもおかしくないですよね」

 なまえさんを怖がらせないように、優しく微笑みながら少しずつ距離を詰めていく。壁に追いつめられた彼女のその細い手首に静かに手をかけ、彼女の必死の抵抗を頭の奥で嘘か幻のように感じながら、それを抑えるために、彼女を拘束していった。
 ハンジさんが俺を拘束するために開発した粘着テープを手首にグルグルに巻き付けて、うるさく叫ぶ口も塞いでしまって。

 拘束されながらも身体を捩らせ必死で抵抗するなまえさんの衣服を剥ぎ取り、犯すのは、もう簡単なことだった。
 
 
「こんな若造に手篭めにされたなんて、団長と兵長に知られたらどうするんですか?」

 なまえさんの身体を床に押し付け、後ろからひと思いに貫いた後、ゆっくりと腰を動かしながら言った。

「きっと二人、激怒するだろうな〜。俺は半殺しにされても平気ですけど、なまえさんは?」

 床に突っ伏す彼女の後頭部の髪を掴んで、苦痛に歪む彼女の顔を眺めた。目を合わせるとピクリと彼女の中が震え、俺のモノを締め付ける。 

「もしバレて二人に捨てられたとしても、大丈夫ですよ。俺はなまえさんを捨てることなんて絶対にしないから」

 彼女の瞳から透明な涙の雫がぽとりと床に落ちた。俺の真剣な愛の告白に感極まって泣いてしまったのだろうか。少し青ざめたなまえさんは、壮絶なまでに綺麗でエロくて、あの二人が夢中になるのが解る気がした。

「あ……、イク、なまえさん……」

 腰を打ち付ける速度を早め、白濁を彼女の中に注ぎ込む。そのまま彼女の背中に体重を預け、そのぬくもりを感じていると、しばらくたって俺のモノはまた硬さを取り戻した。

 再び腰をゆるゆると動かしていくと、なまえさんは涙に濡れた顔で頭を左右に振った。

「ああ、またバックじゃ不満ですよね。次はなまえさんの顔が見えるようにやりますね」

 彼女の身体を反転させると、片足を高く持ち上げるように抱え、自身の滾ったモノを彼女の子宮口を抉るように深くグリグリと押し付ける。もう彼女は抵抗をしなかった。

 「ぐっ」とか「んー」とか、テープで塞いだ口から漏れる声から、彼女が感じてくれているのが解り、幸福感と高揚に包まれた。

 大丈夫。なにがあっても俺はなまえさんを愛してる。



 何度目かの射精の後、いい加減モノが再起不能になった俺は、ようやくなまえさんの手と口の拘束をほどいた。ぐったりと弛緩した身体に、精液がそこらじゅうに飛び散っている。ベタベタに汚れているのに、彼女の滑らかな肌に液体はとても映えて、一段と綺麗でいやらしく見える。

「また、俺とシてくれますよね?」
「……嫌よ。あんたなんて、……大嫌い」

 彼女の震えた声が耳に入る。そうか、きっと二人に義理立てているんだ。本当は俺のことを愛しているのに、口に出来ないだけなんだ。

「なまえさんが団長と兵長のものだってことは解ってる。なまえさんが俺を愛してくれるなら、それだけでいい。ずっと内緒にするって約束する。でも俺を拒絶するなら……二人に、このことを話すから」
「嫌……」
「二人は嫉妬深そうだからなぁ……でも、あの人達に抱かれたい女は掃いて捨てるほどいるだろうし、また別の誰かが相手になるよ」
「そんな……」
「そうしたらなまえさんは俺だけのものだ」
「お願い……それだけは、……やめて」
「じゃあ、俺を愛して? キスして……?」

 しばらくの間の後、彼女の冷たい唇が義務的に押し当てられる。固く結ばれたその唇を強引にこじ開け、深く重ねていった。

「ほら、もっとして」

 そう促すと、彼女は躊躇いながらも舌を伸ばしてくれ、口内で絡め合わせながら、お互いの唾液でベタベタになるまで貪るようにキスをした。

 そんな情熱的な口づけを交わしながら、心は重く軋んで、だんだんと冷えていくようだった。
 彼女をもっと、もっと抱いたら、全部自分で埋め尽くしてしまったら、きっとこんな気持ちは晴れるに違いない。俺を怯えたような瞳で見つめるなまえと目が合うと、再び興奮が身体に宿るのを感じた。


(2014.1.21)
Thanks:カレンさま

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