正しい彼女の守りかた

「明日、同期とハロウィンパーティーするんです」

 訓練後、リヴァイがいつものようになまえの部屋を尋ねると、そこは甘ったるい匂いが充満していた。なまえは街で買ってきたのであろう、飴玉や焼き菓子をいくつもの小さな袋に詰め合わせ、可愛らしいリボンで結びラッピングしている。

「Trick or Treatってやつか」

 104期の連中は、なにかにつけて集まったり、騒いだりすることに余念がないのだ。確かに、命のやり取りをする壁外では他の兵士との信頼関係が重要であり、こういったイベントでも仲間との結束を強めるのに役立ってはいるのだろう。
 巻き込まれるのは面倒だが、勝手にやるのは大いに結構なことだ。いつになく楽しそうな様子の彼女を眺めながらリヴァイは思った。

「お菓子くれなきゃ、イタズラしちゃうぞ!」

 不意に猫耳を付けたなまえがリヴァイの目に飛び込んできた。彼がちょっと目を離した隙に着替えたのだろう。お菓子のやり取りだけではなく、仮装までする気だったらしい。どうですか? と無邪気に尋ねてくる。
 これはまずい、と彼は直感的に思った。104期の連中が変な気を起こしかねない……、と。

「おい……、なまえよ。本当に悪戯(卑猥な方の意味で)されたらどうするんだ、てめぇ」
「何言ってるんですか! そんな台詞は形だけで……」

 危機感が足りない。頭をかすめるこの気持ちは何なのだろう。怒りなのか、焦りなのか――。

「あのライナーとかいう馬鹿でかい奴に押し倒されたら、抵抗できるのか? それにあのベルトルトとかいう無害そうな奴ほど中身がヤバかったりするんだよ」
「はあ!?」
「エレンのようなぶっ飛んでる奴も危ないしな……」
「……あの! 誰もが兵長のように年中変態的なことを考えてるわけじゃないですからね!? 自分を基準に考えないでください」

 極めて扇情的な言葉を口にして、頬を膨らました猫耳娘が上目使いで睨んでくる。これはもう、悪戯(変態的な意味で)してくださいと言っているようなものではないか。

「躾が足りねぇな」

 リヴァイは吐き捨てるように呟いた瞬間、強引になまえの唇を奪っていた。舌で弄ぶように深く浅く、口内を堪能していくと、涙目になって息を荒くした彼女の姿が目に入る。頬を少し紅潮させた猫耳娘……理性の糸がぷちっと音を立てて、簡単に切れていくような気がした。
 ――危険だ。104期の連中の目に触れさせるには危険すぎる。

「こうして襲われたらどうなるか、よく理解するといい」

 掴んでいる彼女の手に力が入っているが、そんなものは簡単にねじ伏せられる。理性を失くした男がどういうものなのかを、彼女の身体に教え込む必要があるな、と彼は心の中で笑った。

「お菓子、差し上げますから許してください……!!」
「お前より甘いお菓子なんて知らない」

 ひぃ! とかいう色気のない悲鳴を上げ、赤くなったり青くなったり忙しいヤツだなと呆れながら、彼女の身体を弄っていく。後ろを向いて逃れようとする彼女の後ろ姿に尻尾が付いてるのが見えた。引っ張るとスカートが持ち上がり、彼女の下着がちらっと見えた。この衣装を脱がせるのはやめておこう、と思った。

 彼女の下肢に手を伸ばして下着だけ取り去り、緩急を付けて指で弄んでいく。彼女の喘ぎ声が猫が啼くような声に聞こえてくるのは気のせいだろうか?
 とろとろに溢れた、甘い蜜を手にすくって彼女に見せつけた。

「変態はどっちだよ。コスプレして、感じてるんじゃねぇか」
「……っ! 違うもん……!! 兵長が……!」
「こんなんじゃ、すぐに悪戯できそうだな。どんな風に犯されたい? 猫だから、後ろからだな」
「変態っ! 変態兵長!!」
「なんとでも言え。あ、今からは猫語で喋れよ」
 
 彼女の秘部に自身を当てがい、腰を進めていく。
 ほら、淫らな身体は簡単に男を受け入れてしまうだろう? どんな酷い目に遭ったっておかしくはない、そんな姿で、どんな風に男を煽っているかも知らずに。
 こんなお前の姿を誰にも見せる訳にはいかない。

「へい……ちょ、……もうダメ……」
「そんな頼み方じゃねぇだろ」
「イっ……かせて…、ください……、にゃ……」

 聞こえるか聞こえないかの小さな声で、涙目の彼女が真っ赤になりながら訴えている。淫らに腰をくねらせ、中は吸い付くように蠢いている。
 理性を失くした男が問題なのではない、男に理性を失わせるコイツが問題なんだ――。興奮と情欲に支配された頭の片隅で、リヴァイはそのことをはっきりと思い知らされた。
 
   

「お前、やっぱりそんなの着て行くな。もっと他の……」
「そんなに誰かに襲われるのが心配ですか?」

 髪は乱れ、既に猫耳は取れていたが、それでも尚愛らしいなまえが問う。彼女は、大丈夫だと思うんだけどなぁなどと往生際悪く呟きながら、突然何か思いついたように目を輝かせた。

「あっ! それなら、兵長も参加すればいいと思います! お目付役として」

 もちろん、おそろいの猫耳を付けて、ね。
 そう言ってなまえはリヴァイに猫耳のついたカチューシャを付けた。

「可愛い」
「……てめぇ、まだ躾が足りないようだな」
「お菓子くれなかったから、イタズラ」

 なまえはふわりと笑う。やはりこいつは解っていない。
 彼女を守ってやれるのは俺だけだ。仕方ない、甘んじて受け入れよう。


(2013.10.30)

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