その理由は


イルーゾォはいつも否定ばかり。例えば私の好きな食べ物、私の好きな服。よくそんなもの、趣味が悪いと事ある毎になんでもかんでも。そして今日も今日とていつも通りの言葉が飛んでくる。

「だから見る目ねえって言ったんだよ、あんな男が良いなんてな」

ギシッとソファが軋む音がする。隣を見なくてもイルーゾォが呆れ返った顔をしているのは明白だった。

「他に女いるのなんて分かってたことだろ」

そんなこと言われても好きだったのだ。他の誰でもない彼が良かった。

「いつも約束すっぽかされてんのにいつまでも待っててよォ、健気なこったな」

それ以上言わないで、もう分かったから。

「挙句ほかの女と連れ込んでる所に鉢合わせして追い出されたって?」
「……」
「本当におまえは――」
「もういい、もう放っておいてよ!」

なんでなんでなんで?いつもいつも、私をからかうのがそんなに楽しい?

「イルーゾォなんて嫌い……」

私が何かイルーゾォにした?嫌いだよ、イルーゾォなんて。

「――本当に見る目ねえよ、おまえは。自分を思う男が目の前にいるのにいつまでも気が付かねえんだからな」

やっと顔を上げて視界に彼の姿を捉える。なぜ私より彼の方が傷付いた顔をしているのか、混乱している頭では理解出来なかった。



Twitter 2020.01.24
2020.02.16


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