御礼&企画小説 | ナノ
*花言葉*
「るんるるん〜」
鼻歌交じりにガーデニングに水をやるエステル。朝日に照らされて光のしずくが花に注がれる。
オレはそんな彼女の後ろに忍び寄り、ぎゅっと包み込むようにほし体を抱きしめた。
「ひゃう!? ゆ、ユーリ?」
「おはよーさん、エステル」
「おはようございますっ」
きらきら輝く笑みを浮かべるエステル。白くてやわらかいほっぺたにキスをひとつ落とした。
花壇に植えられた花はきれいに咲き、私を見てと言わんばかりに上を向いている。エステル好みの、愛らしい花たちばかりだ。
「ちょっと待って下さいね、水やりが終わったらすぐに朝ごはんの支度しますから」
そういって水やりを開始するエステル。また聞いたこともない鼻歌を歌っている。どうやら相当上機嫌のようだ。
何がそんなに彼女を上機嫌にしているのだろうか。首をかしげたところで、花壇に昨日までなかった顔があることに気付く。
「新しい花が咲いたのか?」
「あ、気付きました? そうなんですよー、かわいいでしょう? パンジーっていうんですっ」
なんだか独特な形をしているその花は花弁に光の粒をのせ、きらきら輝いている。たしかに、これはかわいい。
「へえ。かわいいな」
「でしょう? 異国の言葉をもじってつけられた名前なんですけど、その単語の意味から花言葉に“もの思い”って意味があるんですよ。どことなく、もの思いにふける人の顔みたいに見えるでしょう?」
まあ、言われてみれば、そう見えないこともない。風に吹かれてゆらゆら首を揺らすその花に、エステルはくすっと微笑む。
「そこから転じて“私を思ってください”とか“純愛”とか。花言葉もなんだか愛らしくて、わたしこの花好きなんですっ」
「純愛ってのはまた異色な気がするけど」
「そうですか? わたしのことを考えてもの思いにふけるって、純愛な気がしません?」
「ああ、そういうふうに思考を展開すればそうなるか」
さすが小説を書くだけのことはある、発想が豊かだ。
エステルはこっちを振り返り、そっとほほ笑む。なんだかその笑みに、胸が小さく高鳴った。
「ユーリも、わたしのこと考えてもの思いにふけったりしてくれてます?」
「もの思いにふける、ねえ」
そりゃあ、コイツのことを考えないこともないけど。
……そういうのは、オレの性分ではないわけで。
ぐっと彼女の腕を引き寄せ、抱きしめる。そして、衝撃で上がった顎を指で固定し、唇にキス。
「ユーリ!?」
「こういうのは純愛にふくまれねえかな?」
「もうっ」
ぷう、と頬を膨らませながら、でもその顔は耳まで真っ赤で。
こんなに愛らしい彼女を目の前に純愛を貫くのは正直無理なんじゃないかと思ったりする。
(愛らしい笑顔)
++++++
パンジー
花言葉は『物思い』『私を思ってください』『純愛』
これにて花言葉企画終了です!
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それでは40000hitありがとうございました!
またのお越しをお待ちしております!
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