御礼&企画小説 | ナノ
*お祭り少女*






「今宵は祭りじゃー!!」

 叫ぶように、愛らしい声が祭りを宣言し、そしてそれをあおるようにわき上がる男たちの野太い声。
 僕はやれやれ、と苦笑を浮かべながらその中心にいる少女の笑みに、顔をほころばせた。


 カプワ・ノールでお祭りを開催する。騎士団にはその警備を頼みたい。
 ユーリ伝いに受けた依頼により、騎士団はいま、ノール港で治安維持のための警備に努めている。僕がこれに参加できるのは、ひとえにヨーデル陛下の計らいのおかげだと言える。
 同じギルドの仲間たちとはしゃぎまわる彼女の姿は、夜目に鮮やかだ。長い金髪はいまでも三つ編みのままで、彼女がはしゃぐたびに楽しそうに跳ねる。見ない間にきれいになったなと笑っていたら、さっき通りすがったユーリに茶化された。

「フレン!」
「! エステリーゼ様……」

 感慨にふけっていると、後ろから声をかけられる。そこにはおひさしぶりです、と頬笑みをたずさえたエステリーゼ様がたっていた。
 ユーリと結婚した彼女は愛も変わらず愛らしいままで、一児の母とは思えない。

「フレンにパティから伝言です!」
「伝言……ですか?」
「はい!」

 エステリーゼ様はぐいっと、僕の腕を引っ張ると耳もとでささやく。
 それに目を見開けば、彼女は悪戯っ子のように笑った。

「ちゃんといってあげなきゃダメですよ?」

 返事を返す間もなく、彼女は遠くにユーリの姿を見つけて走って行く。ユーリは片手にまだ小さな子供を抱え、もう一方の手を僕にあげる。僕もそれに返すように手をあげた。
 近くにあった時計を見上げる。針がさす時間は、エステリーゼ様がつたえた時間の10分前。
 僕はにやける口元を押さえながら、パティが指定した場所へ駆けだした。


「パティ!」

 路地裏に彼女の姿を見つけ、僕は声を張り上げる。
 ふりかえったパティは僕を視界にとらえると、ニッと笑った。

「久しぶりじゃの、フレン」
「久しぶり、パティ」

 久しぶりの彼女の姿に、テンションが上がって行くのがわかる。それを感づいたのか、パティはくすくすと笑った。

「今のフレン、尻尾があったら振りまくってそうじゃな」
「はは。久しぶりだから、会えてうれしいよ」

 抱き寄せようと手を伸ばすが、パティはそれをするりとかわす。
 どうしたの、と聞こうと思ったが、すぐに彼女は僕の後ろにまわり、その背に抱きついた。

「会いたかったのじゃ、フレン……」
「パティ……」

 背中に感じる彼女の温もり。
 その手に手をかさね、僕もだよ、と笑う。

「昔みたいに、あの法被を着てはしゃぎまわらないのかい?」
「あんなのもう入らんし、お祭り少女は卒業したのじゃ」

 さっきの様子からして、そうは見えなかったけどな。
 なんていうと怒られるのは目に見えているから僕は黙っている。パティは笑うと、僕の前にまわりこみ、軽く唇にキスをした。

「……今日は積極的だね」
「そうかの?」

 原因は分かっている。たった今鼻腔をくすぐったアルコールのせいだ。
 僕はため息をつき、彼女の腕をひき、真正面から抱きしめる。いつもなら恥ずかしがって逃げるくせに、今日は腕の中で大人しくしているものだから胸の中がざわざわした。

「ねえ、パティ」
「なんじゃ?」
「キス、するよ?」
「……どうぞ」

 今度は僕から、そっと唇を重ねる。
 子供みたいなキスに不満そうな彼女に、続きは今夜宿でといったら軽くすねをけられた。













(浮かれているのは僕も同じ)





++++++


パセリ
花言葉は『お祭り気分』

お祭りデートでもなければ、パティに振り回されてもいないですね…
遅くなったうえにこんな作品で申し訳ありません(>_<)

それでは、企画参加ありがとうございました!
またのおこしをおまちしております!

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