御礼&企画小説 | ナノ
*君を思う*







 エステリーゼ様の部屋のドアをノックする。

 すぐに返事があり、開いたドアの向こうには、桃色の彼女。






「フレン? どうしたんです?」

「突然すみません、エステリーゼ様」






 エステリーゼ様は最初こそ驚いたように目を見開いていたものの、すぐに満面の笑みを僕に向けてくださった。


 頭を下げた僕に、構いませんよ、と笑う。






「その、これを」

「?」






 差し出したのは、一輪の向日葵の花。


 エステリーゼ様はぱあっと目を輝かせ、きらきらした表情で僕と向日葵の花を交互に見やる。






「うわぁ、きれいです! どうしたんです、これ?」

「遠征で赴いた場所にひまわり畑がありまして。ぜひ、エステリーゼ様にもお見せしたくて」

「わざわざ持って帰ってきてくれたんです?」






 一つ頷けば、うれしそうにほほ笑む彼女。

 その笑顔を見ることができて、僕はほっと胸をなでおろす。






「少し萎れかけ出申し訳ないのですが、気持ちだけでもと思って」






 水が足りなくてひしゃげた茎。

 エステリーゼ様は首を横にふって、その一輪の花を握り締めた。






「水に入れてあげれば大丈夫です。ありがとうございます、フレン! うれしいです!」

「それなら……よかったです」






 エステリーゼ様は向日葵を鼻に近付け、息を吸い込む。


 向日葵に口づけているようにも見える姿に赤面しそうになり、僕は慌てて顔を伏せた。






「いい香り……。お日さまの匂いがします!」






 ろくに城から出たこともない、捕らわれのお姫様。


 その彼女に世界を見せてあげたくて、持ち帰る世界のかけらは、すべてを伝えるには余りにも小さい。


 そんな小さなものしか与えることのできない僕の手も、また小さい。






「よかったら、お茶を飲んでいきません? とてもおいしい紅茶をいただいたんです! そのお花畑のこと、もっと詳しく教えてください!」

「いいんですか?」

「もちろん! 入ってください」
















 なあ。


 いつかあらわれるだろう、彼女を愛し、彼女に愛される人。


 君の手なら、もっと大きく、彼女を世界に連れだすことができるだろうか?












「ありがとうございます、エステリーゼ様」





 僕はそっとほほ笑む。















 なら、君が来るその日まで、僕は世界の小さなかけらを彼女に届けよう。


 彼女だけを愛し、その愛らしい顔に、笑顔が絶えぬように。



 だからどうか。

 その大きな手で、彼女を連れだして――。













(どこにいるとも知れぬ、君を思う)





++++++


ひまわり
花言葉は『あなただけを見つめる』


フレエスというかフレ→エスになってしまいました(汗)
設定としては、本編が始まる前の話です。
それと、一応リクエストはお一人様一つのことだったのですが、せっかくリクエストして下さったので、おまけとして書かせていただきました。
よろしければ、そちらも受け取ってください!

それでは、企画参加ありがとうございました!
またのお越しをお待ちしております!

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