御礼&企画小説 | ナノ
*匂いに誘われて*
――あ、金木犀の香り。
通学途中、道を曲がったところで鼻腔をかすめた甘い香りに、歩みを止める。
このあたりに、金木犀の気なんてあっただろうか?
あたりを見渡すも、見当たらず首をかしげる。
歩みを進めていけば、どんどん匂いが強くなってくる。
どうやらこの先に金木犀があるらしい。
「きゃっ!?」
「うおっ?」
きょろきょろあたりを見渡していたせいだろうか。
横道から人が出てきていたのに気付かず、思い切りぶつかる。
わたしは反動で後ろに倒れそうになるも、誰かがそれを支えてくれた。
「大丈夫か?」
「あ、はい! すみません、ありがとうございます!」
慌てて、態勢を立て直す。
目の前にいる男の人は制服を身に纏っていて、気にすんな、と笑った。
制服はかなり着崩されているものの、どうやら同じ学校の生徒らしい。
エンブレムの色からして、学年は一つ上のようだが。
「あんまキョロキョロ歩いてんと、そのうち電柱にぶつかんぞ」
「う……。ご、ごめんなさい……」
「それより、なんか探してたように見えたけど、落し物でもしたのか?」
「いえ、そういうわけではないんですけど……って、あれ?」
いつの間にか匂いが消えていて戸惑う。
少し後ろに下がれば、あの甘い香りがして大きく息を吸い込んだ。
どうやらあの角からここまでのどこかにあるらしい。
その男の人は怪訝な顔して首をかしげ、わたしを見ている。
「……なにしてんの、お前?」
「あ、えっとこれはですね! その、金木犀の木を探していて……」
「金木犀?」
男の人はゆっくりわたしのほうにまで来て、空気を吸い込む。
そして、本当だ、と目を丸くした。
「金木犀の匂いだな」
「でしょう? わたし、それを探していて……」
「それで、オレにぶつかったと」
「う……」
うなだれたわたしの頭を、ポンと大きな手が叩いた。
「お前、名前なんていうの? 1年だろ?」
「あ、エステリーゼっていいます」
「エステリーゼ、ね。んじゃ、エステルで」
「へ!?」
「ほら、いくぞー」
勝手に名前を略され、腕をひかれ。
わけがわからずにいると、後ろを振り返ったその男の人は笑った。
「オレは、ユーリ。金木犀、探すんだろ?」
ユーリは笑うと、あたりを見回し始める。
向けられた笑みに、心臓が飛び跳ねる。
その想いの名もしらず、わたしは元気よく返事をした。
(恋の始まり)
++++++
金木犀
花言葉は『初恋』
ちなみに、裏設定でユーリはエステルのこと知ってます。
かわいいなーって、通学途中に見つけるたびに思っていて、声をかけるタイミングを狙ってました(笑)
内容はお任せとのことだったので、学パロにさせていただきました!
それでは、いつも企画参加ありがとうございます!
またのお越しをお待ちしております!
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