御礼&企画小説 | ナノ
*気の利く彼女*
「ジュディス!」
目の前のエステルは笑顔で。
その手には、お弁当と水筒。
「お花見、しましょう!」
「……あら」
気付いたら強引に手をひかれて歩いていた。
エステルに手をひかれて連れてこられた場所には、いつものメンバーがみんないた。
家の中にいないと思ったら、ここにいたのか。
リタに絡んでお酒を飲んでいるレイヴンの姿を目の端に止めて思う。
ユーリ達は私の姿に気付くと、片手をあげた。
「久しぶり。悪いな、エステルにつきあわせちまって」
「あら。暇だったし、私お花見好きよ」
「ならよかった」
ユーリはコップにお酒を注ぐ。
花見にふさわしいような透明なきれいなお酒の上に、金粉がわずかに散っている。
甘い、いい香り。
差し出されたそれを笑顔で受け取った。
「ありがとう」
「どーいたしまして」
フレンのとなりに腰かける。
フレンとも軽い会釈を交わし、私はそのお酒にひとくち口をつけた。
「いいのかい?」
「なにがかしら」
「レイヴンさん。リタに絡んでいるみたいだけど」
「あら。おじさまにとってはいつものことだもの。いちいち妬いたりしないわ、私」
「ジュディスは大人だね」
「こいつ、さっき間違って酒飲んだパティがオレに絡んでんの見て、すっげー妬いてたからな」
「ゆ、ユーリ!!」
ああ、それが彼の膝を借りてねむっている理由か。
気持ちよさそうな寝顔で眠るパティにそっとほほ笑む。
彼ららしい経緯だ。
「ジュディス、そこのおにぎりとってくれない?」
「いいわよ」
斜め前からリタが皿をつきだしてくる。
どうやらエステルの作ったおにぎりにご執心らしい。
リタの目の前にあるおにぎりが入っていたであろうタッパはすでに空だ。
さらにおにぎりをいくつかのせ、それと一緒にアスパラの豚肉巻きをのせる。
嫌そうな顔をしたリタに、悪戯に笑う。
「野菜も食べないと体に悪いわ」
「か、関係ないじゃない……」
「あら、エステルが作ったのに食べてあげないの?」
「〜〜っ! 食べればいいんでしょ、食べれば!」
リタはふんだくるように皿を私の手から奪い取った。
それを見ていたエステルはほほえましそうにリタを見守っている。
眼の端に映ったのはうらやましそうにおにぎりを見ているカロル。
「カロルもおにぎり食べる?」
「うん! ありがと、ジュディス!」
カロルの皿にもおにぎりを乗せる。
そのときユーリのコップのお酒が空になっているのに気付いて、それにお酒を継ぎ足した。
「ん、わり」
フレンはその様子を見てくすりと笑う。
今のやり取りのなにが面白かったのかよくわからず、首をかしげれば、フレンはごめんと小さく謝った。
「ジュディスはよく気がきくね」
「あら、ありがとう」
「それに、桜がよく似合う」
フレンの指先が伸びてくる。
それはわたしの髪の毛に触れ、なにかをつまんだ。
その指先には桜の花弁が一枚。
「ちょっと、フレンちゃーん。俺さまのジュディスちゃん口説かないでくんない?」
後ろにぐいと引っ張られ、体が後ろに傾く。
ぶつかったのは、あたたかくてかたい胸板。
下から見上げれば、そこには酒に酔ってとろんとした表情のレイヴン。
「あら、おじさまやきもち?」
「べつにー。ただ……」
おじさまはぎゅっと私を後ろから抱き締める。
落ちていた花をひとつ、それを私の髪の毛に飾った。
「ジュディスちゃんが、よく気が利いて桜の良く似合う美人さんだってーのは、俺が一番最初にいたかっただけ」
「……それじゃあ、次は他の女の子に絡まないようにしないとね」
「……お前ら、いちゃつくならよそでやれっての」
ユーリの呆れ声に、わたしたちは笑った。
(すぐれた美人は桜の中でほほ笑む)
++++++
さくら
花言葉は『優れた美人』
美人さんの話なら何でもとのことだったので、ジュディスちゃんにさせてもらいました!
お気に召す作品になったかは謎ですがよろしければもらってやってください。
それでは花言葉企画参加ありがとうございました!
またのお越しをお待ちしております!
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