御礼&企画小説 | ナノ
*その視線の先に*











「うわあ……っ!!」





 一面に広がる向日葵の花。

 まるで太陽のように輝くその土地は黄色で埋め尽くされている。




 エステルは感嘆の声をもらし、その群生に駆け寄った。

 黄色の中に、エステルの桃色の髪はよく目立つ。


 風が吹くたびに、ふわりふわりと揺れる向日葵。

 オレはエステルを追うように、その群生の中に入り込む。







「ユーリ! 見てください! この向日葵、すっごく大きいですよ!」

「……つーか、お前どこにいるんだ?」







 背の高い日周りに隠され、エステルの姿が見えない。


 そういうことを考えずに走り回るのだから、うちのお姫様には困ったものだ。







「へ? あれ? ユーリ、どこにいるんですっ?」







 ようやくはぐれたことに気付いたのだろう。

 エステルの慌てた声が遠くから聞こえてくる。

 慌てて周りを見渡す姿が、目に浮かぶようだ。



 苦笑しながら、声のする方向に歩みを進める。

 風で揺れる黄色の隙間から、桃色の髪の毛を見つけた。



 オレはエステル曰く“意地の悪い”笑みを浮かべて後ろから忍び足で彼女に近づく。







「ユーリー!? どこですかー!?」

「――みーっけた!」

「ひゃっ?!」







 勢いよく後ろから抱きしめれば、エステルは短い悲鳴を上げた。

 腕の中でびくりと肩を強張らせた彼女が愛しい。







「もう! ユーリ?」

「んー」







 彼女の薄い肩口に顔をうずめる。

 向日葵独特の花の香りの中で、エステルの甘い香りはよく際立つ。



 この匂いが好きなんだよなあ。



 心の中だけでとどめたつもりの言葉は、どうやら声に出してしまっていたらしく、エステルは真っ赤になってうつむいた。





 なんかその仕草がすげー可愛くて。



 ……それがもっと見たくて。





 オレは向日葵の花を手折る。









「ユーリ?」









 負った向日葵の花を彼女の桃色の花にさす。


 ピンクと黄色。

 色は違えど、二つの太陽にオレは小さく笑った。









「これで、オレが見るべきものはお前だけだな」

「〜〜っ!!!」









 ぼんっ!








 空気の抜けるような音とともにさらに真っ赤になるエステル。

 エステルは恥ずかしいのか顔を隠すように、オレの胸に額を押し付けた。






「なんか、今日のユーリ恥ずかしいです……」

「恥ずかしいってなんだよ」






 エステルの言い草が面白くて、オレは笑う。



 だから、気付かなかった。

 エステルがむっとした表情の後、何か思いついたような笑みを見せたことに。





 エステルは近くに会った向日葵を手折る。







「だったらわたしも!」







 勢い良く髪にさされた向日葵。


 茎が頭皮に突き刺さって、痛みに眉をひそめている間に――唇にやわらかいものが重なった。








「エス、テル……?」

「わたしも……わたしが見るのは、ユーリだけ、ですから……」








 そんなことを真っ赤になりながら。


 伏し目がちに上目遣いで。


 きゅっと震えた手で胸元の服を握り締めて。


 ……終いにはキスの感触がまだ唇に残っていたとしたら。









 赤くならねえ奴なんか、いねえだろ。













「……ユーリ、真っ赤です」

「……エステルさんもですけどね」





















(真っ赤に熟した君の顔)






++++++


ひまわり

花言葉は『あなたを見つめる』


この度は花言葉企画参加ありがとうございます!

エステルがユーリにもだもだしていればもだもだしてくださるとのことだったので、二人をもだも出させてみました(笑)
お気に召すといいのですが…。

それでは、参加ありがとうございました!
またのお越しをお待ちしております!

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