「眉…神木さんお早うございます」
「……おはよ」
「早速ですけど眉…神木さん、ちょっと渡したい物が」
「何よ」
「この薬をですね、朴さんに塗ってあげてください」
「何これ。どこから持ってきた薬?」
「えーと…まあ、信用できる……多分信用できる……きっと恐らく信用できる筋から入手した屍の魔障に効く薬だそうで……いや、うん、ほんと、うん、信用…できるはずなんで、多分大丈夫なんで……」
「何なのよその曖昧すぎる言い方!信憑性皆無じゃない!」
「いや…ほんと、わたしも何が何だか良くわかっていなくて……」
「そんなの朴に塗れって言うの!?ぜっっったいに、嫌!」
「えぇえええでもそうしたらこの薬は全くの役立たずですよ」
「あんたが役に立たない言葉を無駄に連ねた結果でしょ」
「嘘のつけない性分でして……」
「使ってほしいなら嘘くらいつきなさいよ」
「ついていいんですか」
「ふざけんじゃないわよ」
「ほら怒った。だから嘘はね、駄目だと思うんですよ」
「状況が状況でしょうが……!テストの点だけかと思ってたけど、あんた本っっ当に馬鹿ね」
「……否定はできないけど、さすがにそうまで言われると悔しいですね。でもまあ候補生になっちゃえば筆記は無いんでもう何でもいいです」
「は…?それって、祓魔師の認定試験のこと?」
「そうですそうです」
「……確かに筆記の試験はほとんど無いけど、文字で学んでることは実戦でも必要な知識だってわかってんの?」
「理事長くたばれ」
「……あんたホントに……」
「まあいいです…死ぬほど悔しいけど理事長なんかのことを考えている時間が勿体ない……取り敢えず眉毛さん、この薬を朴さんに」
「だからそんな得体の知れないもの要らないって言って………………あんた今眉毛って言わなかった!?」
「空耳です空耳。でも宜しかったら眉毛さんと呼んでもいいですか」
「よくないわよ」
「徐々に、慣れてきたら神木さんって呼びますから」
「普通逆でしょ…!」
「あまり細かいことは気にしないでください。こう見えてわたしにも色々とありますので」
「ああそう……」
「で、細かいことを気にしないついでに、この薬の詳細も気にしないで使ってください」
「気にするわよ!その薬も、要らないって言ってんでしょ!」
「そうおっしゃらずに」
「い、ら、な、い、わ、よ!」
「そんな…あの、あいつ、あの、ネイ…ネイガー…ネガイウス先生が夜なべして作ったんですよ」
「え、ネイガウス先生が?」
「ああそうですそのねいがうす先生が」
「それならそうとさっさと言いなさいよ。朴に渡しとくわ」
「この……この信頼度!くっそ自ら為したこととは言えやはり腹のむかつきが収まらぬわ!あんなオッサン庇うんじゃなかった!いやオッサンじゃなくて生徒を庇ったわけだけど!だけど!むかつくものはむかつく!」
「は?あんた何言ってんの?庇うとか何だとか、妄想癖でもあるわけ?」
「あぁああむかつく!コートのボタン掛け違えて生徒に笑われろ!」
「……勝手にやっててよ」
「眉毛さんもあんなわたしよりオッサンを信じるんだ」
「そりゃ、あたしあんたのこと殆ど知らないし…感謝は……一応してるけど………………ってあんたまた眉毛って言ったわね!?」
「世の中は間違ってる」
「あんたの頭の中が間違ってるわよ!」
「……朝から元気ですね」
「えっ?あ、奥村先生」
「お、おとうと!」
「メアリさんおはようございます。いつもなら真っ先に朝食をとりに来る意地汚いあなたがいつまで経っても来ないので心配になって来てみれば、朝っぱらからまた厨二ごっこですかいいご身分ですね」
「そのネタをいつまで引き摺る気だよやめろ……!」
「引き摺られたくないなら、自分の言動を見直すことですね。ほら、さっさと食事に行ったらどうですか。兄さんも心配してましたよ」
「へーへーおっしゃるとおりにいたしますよ」
「僕はこれから朴さんの様子を見にいきますけど、神木さんも行きますか?」
「あ、はい。あの、今この……メアリさんが渡してくれたんですけど、この薬ネイガウス先生が魔障用にって」
「……ネイガウス先生が?」
「奥村先生どうかしました?」
「……いえ」
「あの、弟、多分それ、平気ですよ。なんかこう、企んでる感じはしなかったし」
「…………へえ……どうやら随分いろいろと御存知のようで」
「…………うん……」
「は?何のことですか?」
「こちらの話です。メアリさん、今晩じっくり話を聞かせてもらいますから、部屋で待っていてくださいね」
「やだ、奥村先生たらはれんち、」
「ぶっ殺すぞ」
「……すいませんほんの出来心です冗談です」
「神木さん、行きましょうか」
「え……あ、はい……」
「詰んだ……」