「メアリ、車内販売来たけど何ぞ要るか?」

「お気遣い有り難うございます勝呂ジュニア。しかし車内のお菓子なんてばか高いもん買おうとしてんじゃないですよこのボンボン。傾いた寺の癖にボンボン」

「んなっ!?おい志摩!お前んとこの使い魔なんやからちゃんと躾けとけ!」

「ちょ、坊、メアリは使い魔とはちゃいますよ!?」

「は?使い魔やないんか?せやったら何で志摩んとこにおるんや」

「坊、確かメアリさんは柔造さんと金造さんが封を解かはったのやなかったかと」

「封…なんやお前、封印されとったんか」

「なんだそのドヤ顔は……お前まさかわたしが悪さをして封印されていたとか、そんな妄想を構築したんじゃないでしょうね勝呂ジュニア」

「それしかあらへんやろ」

「はっ、アホだな勝呂ジュニア。アホだな」

「何やとぉ!?」

「ジンって言うのはしょっちゅう人様に使役されるんですよ。つまり、封印じゃなく捕獲されてるんだよ。まるでカブトムシか揚羽蝶のようにな!」

「な、何やて!?乱獲!?め、メアリ思い出してんか!?」

「………………まあ、一般常識的なことをふいに思い出しただけです」

「そ、そうか……」

「けど、それがほんまやったら、同じ人間として申し訳ないですわ…」

「子猫さん……お前本当に癒やしだな」

「カブトムシ…揚羽蝶…」

「そうだよ勝呂ジュニア。つまりこのわたしはティンカーベルと同じなんだよ」

「うわ」

「それは……すんません。ないですわ」

「ちょ、子猫さんどういう意味だ」

「同情する気も一気に失せたわ……まさか自分が妖精と同じやと思うとるとは…もっぺん鏡よう見てみい」

「勝呂ジュニアお前わたしの堪忍袋の緒がいつまでも健常だと思うなよ?ある日突然ぷっちり切れて、堪忍袋が火を噴くよ?」

「堪忍袋が火ぃ噴くてどないやねん」

「考えるな。感じろ」

「なあ志摩、これほんまにジンなんか?何でジンがブルースリーの物まねすんのや」

「Don't think, feeeel」

「うわ、めっちゃうざ。なあ志摩、これほんまに七千年前のなんか?」

「坊、七百ですわ。いくら何でも、そこまで年季入ってませんて」

「七千年言うたら、創世記の頃ですねえ」

「ジン的には?」

「……申し訳ないけど記憶喪失なんでー、あんまりそういう、傷口を抉るような質問はしないでもらえますかー」

「何やえらい都合の良い奴やな」

「ふん、何とでも言えばいいですよ。しかしわたしに暴言を一つ吐く度にこの菓子の分け前は減っていくのですよ」

「はあ!?何やその菓子の山は!?」

「わたし宛の八つ橋の包み…あれの底の方にぎっしり詰まっていたのですよ…まあ八つ橋も大量でしたが」

「ああ、明陀の皆さんがメアリさんにて用意してはった包みですね」

「子猫さん知ってたの。止めてよその暴挙を。多分あれ、一ヶ月掛けても食べきれない量なんですけど」

「八つ橋って案外食べづらいからなあ」

「あれ、志摩さん嫌いでしたっけ?」

「生は好きやけどこっちは…たまに口ん中刺さりません?」

「そうですか?」

「子猫さんはお前のような粗忽者じゃないんですよ志摩五。しかし飲み物で流し込まないときついとはわたしも思っています」

「まあ干菓子やしな」

「日持ちするようにて選んでくれはったんやないですか」

「どうせ干菓子なら落雁が良かったです。あと和三盆とか」

「ゼータク言いなや。正体の怪しいジンなんぞが餞別もらえただけ感謝せえ」

「く……反論できないのがものすごく悔しい」

「まあまあ、坊もメアリも落ち着いて。で、どれから食べてええの?」

「どれからでも良いですよ。どうせ東京着くまでに全部無くなります」

「せやったらポッキー開けてええですか」

「子猫さんほんとに癒やしだな。ポッキーでもパイの実でも栗栗甘栗でもどんどん開けてください」

「お前さっきから子猫んこと見る度顔キモぉなっとるで」

「メアリ、いつも俺らにしてる反応と違わへん?」

「お前らには謙虚さが足りません。そして子猫さんは小さい」

「ちっ……!」

「おうコラ!お前の悪意に満ちた言葉でショック受けてるやないか!」

「悪意なんてねーよどこに感じ取ったの悪意を」

「子猫さん大丈夫です、背ぇなんてこれからですよ!」

「志摩さん……」

「おら、お前もさっさと謝らんかい!」

「傷付けるつもりはありませんでした…でも世間の女性たちは小さな物が大好きなのです。小さければ小さいほど、愛くるしくて大好きなのです。わたしも人並みの感性を身につけてみたのです」

「誰やお前は!あと形から入んな!」

「小さいと…大好き……子猫さん狡いわ!なんでそない小さいんや!」

「えぇぇええ志摩さん!?」

「はあ……冗談は程々にしてお菓子食べませんか」

「誰のせいや誰の!ちゅうかこないクソ長い振り……冗談は顔だけにせえよ!」

「お、お前…!敢えて誰もが触れずにいたことを…わたしだって一応女の子なんですけど!」

「はっ、ジンのくせして女の子ぉ〜やと?片腹痛いわ」

「あ、あのメアリさん、東京着くまでに腫れひかはるとええですね」

「くっ、逆襲か子猫さん。復讐なのか」

「メアリこれ使うてええよ。おっちゃんから貰た生菓子の保冷剤。菓子は直ぐに食べたらええし」

「ご、五男……」

「そない腫れ上がった目ぇで虫が見えへんなんて言われたらどうしていいかわからん」

「五男てめええええ」

「お嬢ちゃんたち、列車ん中は静かにせなあかんよ」

「「「「……すんません……」」」」

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