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世界一強いお父さん Mar 06, 2015 「おとうさまー、ねえねえ」 「その呼び方やめえ、俺の親父みたいで腹立つ」 「お父さんのお父さん?おじいちゃん?」 「せや、お前からしたらおじいちゃんや」 「僕、おじいちゃんに会いたい!」 「……まだ顔もみせとらんやったし、近々行くか」 「ほんと!?やった!僕遊んでくる!」 「ああ、」 「雅……大丈夫か?」 「ん?何がや?」 「雅のお父様に会いに行くの、辛くないか?」 「……せやかて、孫の顔くらい見せてやらんと死んでも死に切れんとちゃうか」 「じゃあ、行こう。でも無理は良くないからな」 「大丈夫や、でも迷惑はかけると思う」 「夫婦なんだからそんなのいくらでも」 「………ありがとう」 at 12:43 |
あお、はる Mar 04, 2015 バアアアン!! 「ウワッ!!」 「くっ、びっくりしてやんの」 「るせーな!ドアは静かに開けろ」 「は〜、なんでこんな暑いんだろ」 「ほんと太陽死ね」 「喉乾いたな〜」 「ジャンケンすっか」 「ほらよ、メロンソーダ」 「うひゃ!つめた!」 「イヒヒ、びっくりしてやがんの」 「うるさいなあ」 「あ、そうだ。今日の授業の板書見せろよ」 「しょうがないな。るーたすのパフェで手を打とう!」 「げ、あそこ苦手なんだよなあ……」 「キャバ嬢と違うキラキラだから?」 「そうだよ、おれのタイプじゃねー」 「でもるーたすのパフェじゃないとノート見せないから」 「ぐっ……」 あお、はる。青春 at 12:54 |
僕が立つ場所はあまりにも不安定で Mar 03, 2015 僕たちに太陽は無かった。 (お天道様の下を歩けると思わんことだ) そんな事は分かってる。 でも、僕の太陽は……君だけだった。 「ジェラルドくん、おはようございます。朝ごはんできてますわ」 「おはよう……ごめん、朝ごはんいらないや」 「あら、食欲無いんですの?」 「ん、ちょっと……あと今日は帰らないから夜来なくて大丈夫だからね」 「そ、う…ですか」 目を伏せて長い睫毛を震わせる彼女に、罪悪感を覚える。 騙すような事をして、いつかバレたら……そう思うと恐怖に飲み込まれそうになって。でももしかしたら、彼女なら分かってくれるのではないかと淡い希望を持って打ち明けて楽になりたいとも思う。 「じゃあ、僕行くね……っ」 「?……行ってらっしゃいませ」 靴を雑に履き、重い鉄の扉を力の入らない手で押し開け、エレベーターへ向かう。 イリーナは僕が夜中に家を出て、イリーナがまだ寝てる朝方に帰ってきて、一緒に寝てた風にして朝起きてごはんを食べてまた家を出る、なんてことは考えてないだろう。 だから今日もそうした。 「イリーナ、少し不審がってたな……隠せてなかったかも」 エレベーターに乗り込んだところで、足が縺れ自分の体重が支えきれなくなり壁に寄りかかった状態で座り込んだ。 「はあ、はあ……早く行かないと、イリーナがもう少しで家出るのに……」 ボタンを押してもらえなかった鉄の箱は扉を閉めると「行き先ボタンを押してください」と機械音声を響かせて僕を焦らせた。 先程イリーナと顔を合わせた時は麻痺していたから気付かなかっただけかもしれない。 「く、そ……酷いよ本当に、酷いや……」 手を自分の横腹にあてがうと、ヌルッとした感触に溜息を吐きたくなった。 こんな仕事をしていれば、いつかこうなる事は想定していた。怖くも無かった。僕はこうなって当然の人間だ。 でも今大切な人ができて 「こんなに、っ怖いなんて……」 霞む。目の前の見えるもの全てが霞んでいく。 遠くで聞こえる僕を呼ぶ声も。 太陽は消えた。 僕の心の中から。 at 17:06 |
KEEP OUT Feb 24, 2015 朝、日が昇り始めた神田町のとある公園に人集りができていた。 ランニングをしていた人や通勤中のサラリーマン、犬の散歩をしていた主婦などさまざま。 その人集りの前には警察が数名行くてを阻むように立っていて、その塊は必死に背伸びをし、状況を知ろうとしていた。 そこへ黒塗りの公用車が一台止まり、降りてきた人物は人集りの中心を遠慮なく割って入り、黄色のテープを潜って行った。 「ここが現場ね」 「被害者はどこだ」 「こちらです」 薄いベージュと濃い茶髪の頭二つが、テープの近くにいた警官へ尋ねる。 警官は二人を50mほど先にあるブルーシートで囲まれた一角へ案内した。 二人はシートの中へ入り、ゴム手袋をしながら地面へ視線を落とした。 「あ、一ノ瀬管理官、八神課長ご苦労様です。お待ちしておりました」 「いいから状況を話せ。この無駄な時間が死者への冒涜だと思わないのか」 一ノ瀬は地面に横たわっている遺体と思われる人物の前に屈み、体を隅々まで観察している。 八神はその体の首や顔を触って何かを確かめるようにした。 一ノ瀬の横にいた警官は、手帳に書いていたことを読み上げる。 「す、すいません……被害者の名前は〈清水孝雄〉47歳。衣類のポケットから免許証が見つかりました。死因は首を絞められたことによる窒息死だと思われます。」 「思われますじゃない。窒息死だ。明確な答えが言えないなら警察を辞めろ。顔は腫れて広範囲に暗紫赤色の死斑がある。死後7〜8時間は経っている」 「あと……現場が綺麗すぎるわ。争った形跡もない」 「それはこの首元を見れば分かる。スタンガンの痕だ。遺体はうつ伏せになっているから背後から襲った。スタンガンで気絶させた後、馬乗りになり縄で絞殺。索状痕のズレがないことから被害者は抵抗しなかった」 一ノ瀬と八神は、警官が口を出す暇さえ与えないほど一瞬で現場や遺体の状況を言い当てた。 その中には、二人がここへ来る前にいた警官たちでさえも読み取れなかった事もある。 「絞殺なら、被疑者は男でしょうか?」 「スタンガンを使って犯行に及んだなら、女でもできる」 「では男女間のトラブル……?」 「それなら犯行手口に荒さが目立つはずだ。恋愛のトラブルではない。遺体も、その周辺も綺麗すぎる。これは用意周到に計画されたものだ」 「確実に被害者を狙ってたってことよ」 「す、凄い………さすが警視庁の天才」 "天才"と言われても顔色一つ変えない二人は、ゴム手袋を外し立ち上がってブルーシートから出ると、立ち止まって暫く無言でいた。 何かを考えているようだったが、口を開いたのはほぼ同時で二人の声が重なった。 「「この犯人、気に食わない」」 一ノ瀬は先に足を進め、先程降りてきた公用車へ乗り込んだ。 相棒が同じことを考えていたことにクスリと微笑んだ八神は、後を追いかけ運転席へ座りハンドルを握る。 「あとは戻って状況を整理する。捜査会議を開くぞ。八神、お前は戻ったら月嶋を連れて来い」 「了解、ボス」 at 22:34 |
Time machine Jan 09, 2015 貴方から来ない電話 膝を抱える私 眼前の窓に映る幾つもの派手なネオンを睨みつけた。 貴方と過ごした時間は多すぎて、でも こんなに簡単に崩れてしまうなんて。 貴方が最後に残した言葉 どれだけ時間が流れても、 貴方の声がまだ愛しい。 時空を飛び越えて貴方に出会えたら、 例え同じ結末を迎えたとしても、 悔いは残らないはずだから。 最後に私が言いたかった言葉を どうか言わせてほしい。 きっと伝えることができたら、雨も止んで、 この荒んだ心も救われるはず。 at 09:36 |