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私の相棒がこんな乙女なわけがない Dec 10, 2015 「宗一郎、貴方最近なんか変よ」 「?何を言ってる。俺はいつも通りだ」 私が最近一番気になっていること、それは目の前にいる相棒。恋愛という意味で宗一郎が気になっているわけじゃなくて、宗一郎の挙動がおかしい。 今だって普段は鉛筆なんか指で弄ったりしないくせに、ペン回しの要領で鉛筆をクルクルと回している。 そんな器用なことできたのね。 私は思い切って聞いてみることにした。 「宗一郎、恋してるでしょ」 ガターン! 派手な音を立てて椅子から転がり落ちた人物を振り返って、溜息を吐いた。 「なんで八雲が転けるのよ。そこは宗一郎でしょ」 「だだだ、だって……一ノ瀬さんが、恋!?あの一ノ瀬さんが!?」 「月嶋、俺をなんだと思っている」 「え?感情のない機械」 「………お前は今月の給料半減だ」 「ええ!?嘘ですよお!」 ガーン!という効果音が付きそうなほど、大げさにリアクションをしてみせた八雲は、怒らせてしまった宗一郎に対して縋るようにくっ付いている。 鬱陶しそうに八雲を振りほどこうとするも、腰に抱きつかれていて身動きも取れないみたいだったが…… (一応警察なんだから、少し力を込めれば振り解けるのに……) しかし、それをしない宗一郎に少し優しさを感じたりして……嫌だわ、宗一郎なんかに優しさを感じるなんて気持ち悪い。 「それで、実際どうなのかしら?」 「何がだ」 「恋よ。してるでしょ」 「……お前には関係ない」 「ふーん、そう。そういう態度取るのね、宗一郎のくせに。……貴方がハートちゃんのこと好きだって彼女に言うわよ」 「なっ、八神……貴様…」 椅子に座ったまま八雲に抱きつかれていた宗一郎は、八雲をいなかったことにしてまた鉛筆を回し始めた。 私はもう確信してハートちゃんのことが好きなのかと聞けば、それまで白く細い指で遊ばれていた鉛筆が床に落ち、それを八雲が眺めていた。 私は宗一郎の顔をジッと見つめていれば、次第に真っ赤に染まっていく頬に(やはり…)と思わずにはいられなかった。 私の相棒ってこんなに表情豊かで乙女チックだったかしら…… at 08:31 |
Criminal mind Jul 03, 2015 「怪物と戦うものは、その過程で自らが怪物とならぬよう気をつけなくてはならない」 「また始まったわよ……八雲、なんとかして」 「いやだ。八神さんがなんとかしてよ」 「車の中じゃ逃げ場がないじゃないのよ!ああっ、もう!」 「ちょ、ちょっと八神さん運転荒い!」 宗一郎は、犯人の心、所謂犯人の目線になって事件を推理していくので、その中で自分が犯人の意識に呑まれないようにすべきである。ということを言ってます。 at 17:58 |
いつか言いたい、君に Jun 20, 2015 「ねえ、なんで僕のこと好きになったの?」 海と道路を隔てる石の塀を、バランスを取りながら歩く彼女が下を歩く僕を振り返る。 夏風にそよぐ薄いピンクの髪から、季節違いの春の香りがした気がした。 「なんで……うーん。考えたことなかったです」 「へえ?あのとき人目も気にせず大声で告白してきた君が?あれ嘘だったの」 「ち、違います!!」 最近ではあるが、恥ずかしい過去を僕に蒸し返され、顔から火が出そうなくらい真っ赤にした彼女。なんだか虐めているみたいで楽しくなってくる。否、虐めているのか。 塀から下りてきた彼女の眉は、僕に満足のいく答えを言えなかった申し訳なさで垂れ下がっていた。 もし獣耳や尻尾が生えていたら、きっとしな垂れていただろう。 「気がついたら、目で追うようになっていたんです。好きになるのに、理由って必要ですか?」 「………いや、いらないかも」 “好きになるのに理由が必要なのか” その言葉にハッとさせられた僕は、苦笑いをするしかなかった。 僕だって、そうだったじゃないか。 同じお腹の中で育った妹を好きになった理由なんてなかった。 「でも、君に対しては違う、かも……っ」 「え?」 「……なんでもない。早く帰ろ」 えー!と後ろから抗議の声が聞こえるが、無視をしてスタスタと歩いていく。 夏の暑さにやられて、今僕は口が滑りそうになった。 今はまだ、彼女から追いかけてきてほしいんだ。 at 21:58 |
たった2文字の言葉を言うだけでいいのに May 08, 2015 「そろそろ、生徒会に入ってくれる気になったかい?」 「ですから、私は生徒会にも、委員会にも、部活にも入りません」 「んー……、桑名江の為にも入ってくれたら助かるんだがなあ」 「それは九条先輩や香椎くんが頑張れば解決する話なのでは?」 「はっはっは、それを言われるとなあ」 at 20:34 |
泣く子も黙る生徒会 Apr 10, 2015 「会長、今年度の部活予算についてですが」 「おや、もうそんな時期か」 「……貴方はいつまで春休み気分でいるんですか」 「はは、冗談だ」 「どうだか……」 「そんなこと私に聞かずとも、お前なら出来るだろう?」 「会長がしなさすぎなんですよ。書記も会計も毎回来るのが遅れるのどうにかなりませんか」 「それは直接本人に言ったらどうだ」 「やっほ〜。書記ただいま帰還〜!」 「お茶菓子持ってきたから食べよう……」 「ほう、和菓子か。湯のみでも出そう」 「あんたら仕事しろ……!!」 「まあまあ桑名江くん、ちゃあんと仕事はしてきたからさっ」 「…本当でしょうね」 「うん。やっぱりあの3人、常に一緒に行動してるから、誰か一人と接触するのは難しそうだよ」 「そうですか…」 「美花ちゃんを生徒会に誘いたいなら、自分で言えばいいのに」 「美花さんの横にあんなガード固いのが2人もいたら無理でしょう…!」 「え、そうかな?僕なら行っちゃうけど」 「特に黒羽遥斗は要注意人物です。以前あの人から恐ろしい目を向けられてからというもの、益々近づき辛くなって……ああ!学校一の秀才である美花さんが生徒会に入ってくれれば仕事も楽になるのに!」 「何それ、僕たちが仕事してないみたいじゃん」 「してないでしょうが!!」 at 18:20 |