相棒組の場合
※キセキスキーさんは注意!
※ここまでの作品とはノリが違うかな?wを多用してます。
※ヤンデレってなんだっけ…?






「おじゃましまーす!」


人の家の扉を開け放ってのテンション高い一言に、中に居た面々は軽く片手を上げた。


「よー来たな。もう他の奴も来てんで」
「マジすか!もしかして俺が最後!?」
「いや、黒子がまだだ」


今着たばかりの高尾は、室内に居た今吉・笠松・氷室の姿を視界に納め、黒子の姿が見えない事につまらなそうに唇を尖らせた。
それに苦笑して、しかし同じ気持ちである3人は文句を言わない。


「でさぁ、真ちゃんってば笑えるんだぜ!あいつ、まだテッちゃんが自分達の影だと思ってんの!」
「ああ…確かにそういうところはあるよね。アツシも何だかんだ言ってそういう認識のようだし」
「お前等んとこはまだマシだろ。うちなんて大っぴらに煩ぇっての!あのクソ駄犬!」
「それ言うたらこっちもやで?むしろわしのトコの方が厄介やわ」
「「「あー」」」


結局黒子が来るまでの時間つぶしとして彼らが自然と話題に上げたのは、良くも悪くも目立つキセキの世代についてだった。
お互い一人ずつキセキに知り合いが居るため、苦々しい顔つきで愚痴を吐き出している。


「あんまり聞くに堪えないからさー、つい言っちゃった☆」
「何をだい?」
「『つーかさ、テッちゃん捨てたのお前らじゃん。なのにまだ引き摺ってんの?いい加減にしといたら?もうテッちゃんは火神って光見つけちゃってんじゃん。キセキの影だったのは中学までっしょ?今更図々しいにも程があんじゃね?』」
「ブハッ!その時の反応見てぇ!」
「ちょう愕然としてた☆いやいや、何、分かってただろ?って感じだよな!」
「分かってても理解してなかったんじゃないかい?」
「それか逆かもな。解かってたけど分かってなかったんとちゃうか?」
「「「どっちにしろ、緑間ワロスwww」」」」


俺らがテッちゃん通じて繋がってる事、キセキの奴らは知らないからさー。何言うにしても結構気ぃ使うんだよねーと高尾が哂う。
俺は別にバレてもいいけどなと笠松が言い、それじゃあ面白くないと氷室が微笑む。
もっともっと、まだ足りひんやろ?と今吉が目を細めた。


「そういえば、アツシから聞いたんだけど、赤司がテツヤからメールが返ってこないって落ち込んでるんだって」
「へぇ?」
「そりゃ朗報やな」
「なに?テッちゃん何か怒ってんの?あいつなんかしたわけ?俺、赤司とだって吐いても戦うよ?」


高尾が軽薄そうな口調とは裏腹に、深い狂気を湛えた瞳で氷室を見据える。
他の二人も言葉こそ発しないものの、同じ色の瞳をしていた。
返答次第では何でもする男だと、ここに居る4人はお互いに関して深く理解しあっている。


「いや、テツヤは怒ってないよ」
「どういうことだ?」
「返事が返って来なくて当たり前だからね。こないだこっそりテツヤの携帯借りて、赤司の番号、メールも着信も拒否設定にしといたんだ」
「ちょwww氷室www」
「さすがwww帰国子女はやることちゃうわwww」
「でもバレたらテッちゃん怒るんじゃね?」
「大丈夫だよ。誠心誠意謝るから」
「この良い人オーラに一体何人が騙されたんやろか」
「分かるぜ…まぁ黒子なら許してくれるだろーけど」
「「「「ともかく赤司乙www」」」」


相変わらず軽い口調で、ただ瞳だけが物騒な色を宿して、彼らの愚痴は続く。


「そうや、こないだ青峰・黄瀬・緑間と黒子と一緒にストバスやったんやろ?どうやった?」
「え、マジか?!聞いてねぇぞ!」
「なにそれずるい」
「あー!あれ、偶然なんスけどね!俺とテッちゃんが遊んでて、ストバスしよっかーってなってストバス場行ったら何故か青峰が火神と1on1やってて。んで、そこに偶然真ちゃんが通りかかって、さらに黄瀬が嗅ぎ付けてきたんスよ」
「タイガも居たのか…なにそれずるい」
「まぁ近場やと場所がぶったりするわな」
「俺も誘ってくれりゃーよかったのに」
「ほんまやで。わしも行くのに」
「なにそれずるい」


なぁ、氷室がさっきから「なにそれずるい」しか言ってへんで?
ああ、あいつ一人だけ秋田だから…。
などと視線で会話する今吉と笠松だった。


「結局、俺とテッちゃんと火神vs青峰と黄瀬と真ちゃんで何回かやってー。その後テッちゃんと同じチームになりたいとか言ってケンカしだしたキセキ3人は放置して帰ったwwwんで俺らは仲良く火神の家で夕飯食べて泊まったwww」
「通りで。その次の日、若松から泣き言メールが来とったわ。青峰の機嫌が最悪やっちゅーてな」
「俺も学校行ったら真ちゃんにちょうキレられたっスよwww」
「不憫だね」
「でもまぁ、あいつらだしな」
「確かに」
「「「とりあえずキセキざまぁwww」」」


心底楽しそうに嘲笑う彼らだった。
ちなみに彼らにとっては恒例行事なのでツッコミを入れる事はない。
愚痴にも一段落着いたところで、インターホンが軽やかな音を立てた。


「お、来たか。ちょっと迎えに出てくるわ」
「いってらー」


今吉が薄暗い笑みを穏やかなものに変えて立ち上がる。
それを見送る高尾たちの表情も先ほどから一転して晴れやかだ。
なぜなら今インターホンを鳴らしたのが彼らにとって最愛の子だと知っているから。


「お待たせしました」
「テッちゃん!いらっしゃーい!」
「よぉ」
「やぁ、久しぶりだね」


ぺこりと礼儀正しくお辞儀して部屋に入ってきた黒子を彼らは両手を挙げて歓迎する。
黒子がいる時、彼らは共通して春しか生み出さない。
黒子を傷付けたキセキの世代に関する薄暗い感情も何もかも捨て去って、ただ黒子と穏やかに過ごす事だけに全霊を注いでいるからだ。
無駄なものに意識をやる暇さえないと言わんばかりに、ただひたすらに愛を注ぐ。
それが彼らにとっての通常で、当然のことだ。


(光になんか渡すわけねーだろ)
(お前らが捨てたのが一体なんだったのか、理解出来もしないくせに)
(そこで指銜えてみてろや)
(お前らの愛しい影が、他の誰でもない、俺たちと心から笑いあう姿をな)


愛しい子を抱き込んで、4人は密やかに哂い合った。





―――これこそが、陰の軌跡。





***
笠「あーあの駄犬蹴り殺してぇマジ殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
高「笠松さんスイッチ入っちゃってるっすよー。気持ちは分かるけど!でも最初は黄瀬より青峰でお願いします!」
今「なぁ高尾。そのアイスピックの握り方危ないで?誰刺す気なん?青峰はわしも賛成やけど、バレへんようにな」
氷「今吉さん、随分目が楽しそうですね。俺は邪魔な赤司から真っ赤に染めてやりたいんだけど、どうかな?」

「「「「じゃあアミダで」」」」

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