※性的表現有り。受けっぽい少年クラウドです。




夜を彩る相手は、別に誰でもいいわけじゃない。官能的な気分を保つには目からの情報、所謂容姿ってやつは重要だ。
顔が綺麗で声が可愛くて病気持ちじゃなさそうで、性の目覚めや自慰行為も覚えたてな男の子。放っておけば猿のようにやってるくせに、好きな女の子には性的な視線を張りつけるのに躊躇いがあるような、純情少年。それから、私に対して敵意が無いことも必須事項だろう。
私は、私を信用してくれる脆弱な少年が好きだ。しかもその愛で方は結構捻じれている。弱い者を甚振っている様に近いと思う。

「あ、ぁ、ネーム、さんっ」

熱い吐息と声を押し殺し、体を小刻みに震わせている彼を見下ろす。
私達が「上司と部下」という関係になったのはつい三日前のこと。私が保有する部隊に入団した新兵が彼であった。といっても部隊に所属する人間は数百を超えるし、心も身体も弱々しい新兵の顔や名前なんていちいち覚えていられない。
私は腰の上下運動を繰り返しながら、彼の首から掛けられた社員証を手に取った。

「ふぅん、クラウド・ストライフ…ね」
「あっぁあっ、な、なんで、すか、」
「なんでもないよ、クラウドくん」

社員証に印刷されている強張った顔写真と、頬を真っ赤に染めてだらしなく涎を垂らしたコレが同一人物には思えない。
露わになっている薄い胸の飾りをはじくと、彼の背が弓なりに反る。余計な動きを封じるため、彼の両手首をきつく結んである紐が、白い肌に痛々しい痕を刻んでいく。
なんてかわいそうなんだろう。こんな碌でもない大人に襲われて、初めてのセックスであんあん喘いじゃうなんて。
やがて呼吸音が荒く、自由に動かせない彼の腰がもどかしそうに私の下で揺れ動く。額に滲む汗で張り付いた柔らかい金髪をかき上げて、大きな青い目を覗き込んだ。涙を溜め、どろどろの快楽に浸ったいやらしい目だ。発情期の雌猫みたい。

「もうだめ?限界?」
「んんっ!ああぁっ!ネームさ、おれ、もぅ…!」
「わかったよ、いきな」
「ネームさんっ、すき、すきぃ…!」

うわ言の様に愛を伝える姿に、私の熱は少し冷めてしまう。
馬鹿だね、独りよがりじゃないセックスなんて存在しないよ。結局自分の快楽――一方的な欲求が一番大事なの。瞬間的に愛されたいか、愛したいかの二つだけだ。
だから手首を縛る紐を解いてあげないんだよ、クラウドくん。私は君の抱擁や下手くそなキスを望んじゃいないのさ!
「愛しあう」ことが如何に脆いことか。
心を繋げたまま身体を繋げるのが如何に困難なことであるか、この無垢な少年にはわかるまい。





しょうねんクラウドと女の話
(続くかもしれない)
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