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 冬の体温(白黒因子・昶)


 昶さん、誕生日おめでとうございます2020
 くろうみなつ様のイラストを元にしております。イラストはこちら


 秋は過ぎ、冬は深まり。
 色あざやかな街灯とクリスマスの空気とで賑わう街。そんな中を彼と二人、並んで歩く。ふうっ、と吐いた息は白い靄となって現れ、すぐ消えた。ふと吹いてきた強い風に身震いする。もう夜はコートでないと、とても出歩けない。
 隣の彼も私同様、寒いのが苦手だからか「さみい……っ」と声が漏れた。寒気から庇うように、マフラーで覆われた口元を押さえる右手。左手は多分、コートのポケットに入れている。
(つなぎたいなあ)
 そうしたらきっと、この凍えるような冬の温度も好きになれる気がした。あなたの体温をもっともっと、感じられるから。
「おい、なまえ」
 なんて考えていたら、彼が急に立ち止まる。何事だろうと思わず背筋が伸びた。
「手ェ貸せ。暖取らせろ」
「! あっ、えっと、ちょっと待って」
「……ああ?」
 私だって一秒でも早くつなぎたいのは山々だけど、渡すなら今しかない。
 焦れば焦るほどもたついてしまう。ちらりと昶を見ると
「なんだよ」
 再びカバンに視線を戻し、ようやく目当ての物を取り出す。今度は私が彼に差し出す番だ。
「昶、誕生日おめでとう!」
 綺麗にラッピングされたリボン付きの箱。勿論、【Happy Birthday】のタグ付きだ。
 一瞬、面食らったのか目を丸くさせると、すぐにふっと微笑んだ。
「サンキュな。ほら行くぞ、なまえ」
 私よりもずっと大きな手のひらに、同じそれを重ねて握りしめる。離さないように、離れないように。
 今日は寒い。
 けれど、それはこの温もりを何倍にもして引き立たせてくれる。
(ああ。やっぱり今だけは、好きになれそう)
 そうして私達は、ふたたび夜の街を歩き出した。

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