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髪飾りをあげる話(呪術・真希)
ツイッターに載せたものに名前変換を加えたものです。
ポニーテールを揺らし、その身体よりも大きな呪具を持ち歩く後ろ姿。
珍しくパンダ先輩も棘先輩も近くにいない。これはチャンスだ。探していた人物に私は駆け寄った。
「あの、真希先輩! 今いいですか?」
「ああなまえか、どした」
「この間の任務でゴム千切れちゃったって言ってましたよね? これよかったら……」
小さな紙袋を手渡す。中身はもちろん髪飾りだ。この間、野薔薇ちゃんと遊びに行った時に、真希先輩に似合いそうだなと思って手に取ったもの。
『アンタってほんとに真希さんの事好きよね。ま、私もだけど』
と笑われたのを思い出す。図星だから何も言い返せなかったけど。
「これは……付けれねぇなあ」
取り出した髪飾りをしげしげと眺めながら呟かれた言葉に胸が苦しくなる。
趣味じゃなかったのかな、まさかもう他の人から貰ったのかも。そんな嫌な考えが一気に溢れてしまう。
「そ、そうですよねっ、ごめんなさ……ふぎゃっ!!」
突如、鼻をつままれ変な声が出る。鼻声のまま恐る恐る名前を呼べば、盛大に溜息をつかれた。
「その辛気臭せぇ顔やめろ。お前が思ってるような事じゃねぇよ」
「え……?」
「ったく、言わなきゃ分かんねぇのかよ……可愛い後輩がわざわざ選んで私に寄こしたもんを壊すような真似するかっての。あとなまえ。お前、今度の日曜ヒマか?」
「えっ? 空いてますけど……」
「じゃあ付き合え。これ付けてくるからどっか出掛けるぞ。いいな?」
一方的な誘い。
けれど、さっきまでの暗く重い気分はさっぱりと消えてしまった。我ながら単純極まりないけれど、うれしいんだから仕方ない。
日曜日まであと三日。
どんな服を着ていこうか、後でクローゼットと相談しよう。