執筆者コメント:畑で野菜を収穫する、というひとコマを書いてみました。

【トマト】
 独特のにおいが風にのって鼻にはいってくる。まだ青い果実のような、青臭いといってしまえばそれまでだけれど、実りを感じさせるにおいだ。その重さで茎をしならせ、たわわに実った房は土にむけてたれる。
 根元から先に向かってだんだん実は赤くなる、その一番先、みずみずしく皮をピンとはって、今まさに食べごろだと教えてくる赤をプチリともいだ。じゅるり、あふれる水分ごと丸かじり。また風が吹いて、トマトのにおいに包まれる。

【大根】
 土を少し盛り上げながら、青い首を空気にさらしている。貪欲に光を吸い込もうと広がる葉は瑞々しく、素手に当たると少し痛かった。その、葉の根元に上からかざした手を回す。「よいしょっ」勢いをつけて抜いたそれは、今夜のお鍋には欠かせない大根。冷たい水で洗えば、白く輝く。

【オクラ】
 ハサミとザルを持って、さあ、畑へいこう。
 意気込んでむかった先、反抗的な野菜を発見する。逆立ちして生えたオクラの切っ先だ。スーパーで売られているものよりずいぶんと育って大きくなったそれは、まるで凶器のようだ。しかし僕は怯まない。ひややっこ、天ぷら、納豆のために君たちをいただていく。凶器(オクラ)を左手に持ち、凶器(ハサミ)でばつん!

【ジャガイモ】
 そういえば去年はここに植えてたんだっけ。
 離れたところに見える青々と茂る葉と同じものが、足元から生えていた。葉の大きさもずいぶん小さいから、きっと下も小さいんだろうな。そう思いながらえいや、と抜いてみた。実際そんなに力はいらなかったけれど。すると、コロコロ小さなジャガイモがついてくる。
 去年収穫しそこねたイモがこっそり発芽したのだろう。両手に山をつくって帰る道すがら、ポテトフライがおやつに決定した。


執筆野菜:野菜(収穫)シリーズ
『せいか』 ―比恋乃 様

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