畑のおじさんが好意で収穫したやつを、ライザがせっせと焼いて、一方暢気にとうもろこしをかじるレイリアを見てため息をついてやる。
 まったく以て女っ気がない。男子も引くほどがつがつとうもろこしをかじる。
 焼く人間はもちろんライザである。
 ちっちゃくて撫で肩でくりっとした目が可愛いライザの方がよっぽど女だよなあとか思ってるとレイリアが腕組みしながら俺を睨んでるのが視界に入る。
「ちょっとまだ? 早く食べたいのよー」
 焼いたとうもろこしを食べ終えたレイリアにせっつかれ肩を落とす。
 畑のおじさんがレイリアには甘いことを痛感する俺はお手上げである。
 心の中ではだったら手伝えという言葉が回るが、後々の展開も考えると到底言える勇気もなかった。
 何せ今日は皆が楽しみにしていたとうもろこし狩りだ。今年も良いのがたくさんできたらからと畑のおじさんが嬉しそうに語っていたから。
 でっかいとうもろこしを両手に抱えるおじさんを思うとレイリアとくだらない喧嘩するのは避けたかった。
 それに、とうもろこしは何より俺の大好物だ。
 甘くて美味しくてシャキシャキしてて。サラダなんかにある飾りみたいになってるのもなかなかいいがとうもろこしと言えば丸かじり!
 焼いたの食ったら旨いんだこれ「ルークもサボらないで!」
 すっかり自分の世界に浸っていた俺はライザに睨まれ、収穫の手が止まってることに気づいて慌てて再開した。
「早くしなさいよ!」
 集中力散漫だがテキパキと要領のいいレイリアにも睨まれ、いよいよ居たたまれなくなりながらも収穫を再開した。
 今日はとっても暑い。
 太陽が向日葵みたいに綺麗に咲いてる。
 焼くような暑さと眩しい光。
「そういや、最近雨降らないからねー、たまーに夕立があるんだけど」
「ちらほら夕立があってさ、それがいいのかな?」
 晴れてるだけじゃダメだし、雨ばかりでも腐ってしまう。
 絶妙なバランスの中で黄色い粒をたくさんつけてるとうもろこしはきっと格別に旨い。
「よぉし、収穫済ませるぞー!」
「おおー!」
 育ってきてくれたことに感謝をしながら収穫を再開した。
 こんがりした甘い匂いを夢見てせっせと動き回る。

 ──夏の日の、他愛もない一時。


執筆野菜:とうもろこし
『サマータイム、サマードリーム』 ―真北 理奈 様

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