「特にあらへんっすわ」
6月20日から、残り1ヶ月やな〜って考えるくらい、あたしにとって、光の誕生日は大事な日。プレゼントを買うべく、光の一言一句を聞き逃すまい!として毎日過ごしてはきたものの、あれええなあ、これもええなあ、と光はちょっとでも欲しいと思ったらすぐ言うから、ほんまに欲しいモノっていうのがわからない。サプライズしたかったんだけど、このままじゃ埒があかん!と思って、勇気振り絞って聞いたのに、返ってきた言葉があれだった。しかも、「無理ですわ」っちゅー意味わからんセリフ付きで。…そうだった。光くんはこうゆう人だった。忘れてたわけじゃない、けど、「そんなん気にせんといてや」くらいの優しい言葉の1つや2つ、彼氏として言ってくれてもええと思う!
「ハハッ、光らしいわ」 「笑ってる場合とちゃうんやけど」 「いやな、お前から焦りが全く感じられへんから」 「だってな…、無理って…、無理って言われたんやで?」 「落ち込んどるんか」 「あったり前やん!謙也、彼女に無理って言われたことあるやろ?!」 「すまん、ない」 「え、あらへんの?!ヘタレのくせにいっ?!」 「おまっ、ヘタレちゃうわー!!」
光と仲良えから言ったのに、謙也は全く使えへんかった。やから、ヘタレやっちゅーねん。
次の日、さすがに焦ってきて、テニス部のみんなに質問してまわった。もちろん白石を除く。あの変態野郎、以前誕生日に何が欲しい?って聞いたら、お前の全裸の写メでええよって爽やかに言ってきやがった。ムカつくから、お風呂上がりの光の写メを送りつけてやったら、添付間違っとったで〜?とわざわざ電話してきよるくらいの変態っぷり。
「でもな、財前チャンもアンタが全裸の写メ送ったら喜んでくれるわよっ」 「え、ないないない!光に限ってそれは…」 「あーるっ!なにせ大事な彼女なんやもんっ」 「大事な…」 「せやせや。あの財前チャンが好きでもない人と付き合うわけないやろ?」 「あっ、せやな…」 「うんうんっ、とにかく男はオオカミなんやでっ。気をつけやあ〜!」
大事な…、小春の言葉が嬉しくて、恥ずかしい反面、頭の中ぐるぐる回って、結局なんも用意できひんかった。だって…オオカミって…。光に限ってそんなことない!とは、言い切れん。も、もしかして…光も、そーゆーことしたいんやろか…?せやけど、全然そんな雰囲気ちゃうし…いや!光は年下のくせに、色気だけは一人前やけど。って何考えとんねん!あ〜、無駄に緊張する。なんもないやんっ。普通に光ンち行って、みんなでご飯食べて、ケーキ食べて、普通にお祝いするだけやもんな。普通に…。で、でも、ウチは光だったら別に…
「センパイ」 「え、あ、え?」 「何やってはるんすか」 「え、何、え?」 「すごい顔しとった」 「ほんまっ?あ、あかん顔やった?」 「おん。まあ、センパイの顔があかんのは元々やけどな」 「ちょ、なんやてー?!」 「聞こえへんかったん?頭まであかんくなってもうたんすか」
…ないないないない。光に限ってそんなことは絶対ない。
財前宅に到着すると、光のお兄さんの奥さん、つまり義理のお姉さんとその子供が出迎えてくれた。この年で光はおじさんなのかあ、と子供に引っ張られてる光を見て、おもしろくなる。キモ。早く上がってくれへん?とか言った光の眉間には皺がいっぱいだった。子供、嫌いそうやしな。そのままウチはお姉さんとお母さんと一緒に、夕飯の支度。ときおり、なあなあ遊ぼ〜!と子供が駆け寄ってきたのに、少し相手したりもした。のちにお父さんとお兄さんが帰ってくる。でも、食卓が並ぶころには、光はリビングにいなかった。
「美味しかったあ!ね、光っ」 「美味しかったて、自分作ったモンやろ」 「そうだけど!」 「ホンマあほやな」 「どうせあほやし。光のあほ」 「あほちゃうわ。あほ」 「ちょっ、信じられへん!そんな悪い子にはプレゼントあげませ〜ん」 「ないんやろ、どーせ」 「え、なんで知って…」 「謙也くんが言っとった」 「…」 「ええよ、別に」 「…」 「ないっちゅーたのこっちやしな」 「…うぅっ」 「え」 「ひ、ひか…」 「うわ…」 「や、ごめ、んね…」 「いや、ええっちゅってるやないですか」 「光が、そん、なプレゼ、ント…欲し、いなんておもっ、わなかたァァァアウワァァァア」 「うわ、うざっ」 「ごめんなさいィィィィィイ」 「ええから!子供みたいに泣くなや!」 「だってェェェェエ」 「はあ…、一回しか言わへん。よく聞け」 「………ぐすん」 「…センパイがおったら、それでいいっすわ」
「ひかるゥゥゥゥウ!!!」
私的お祝い方法 涙サプライズ〜☆あはっ
090720 光ハピバ 7月20日に光る様へ vector/涼
|