怖いですか、と微妙な距離を保ちながら困ったように微笑する古泉にわからん、と答えると鼻頭にキスが一つ。

「怖がらせてしまってすいません」
「……やめる、のか」

怖くても別に俺は古泉が相手ならいいかなとかそんな乙女なことを考えていたので中途半端に開放されるのは寂しい。
もっとこう、理性も何も手放してしまうほどの魅力が欲しいものだな、まったく。
俺の上から退こうとする古泉の首に手を回して引き寄せ、ぎこちなさの目立つキスをすると、相変わらず困ったように笑ったまま引き離される。

「だめ、ですよ」
「なんで」
「……止められなくなるから」

貴方が泣いても、怖がっても、痛がっても、止められなくなるから、駄目ですよ。
そう云って上体を起こすと俺を抱き上げ膝の上に座らせる古泉はすっかり普段通りだ。
セックスくらい、勢いでやってしまってもいいじゃないかと俺は思うのだが、古泉は此方がびっくりするほど俺を大切に扱うから、勢いでなんてありえないんだろうな。
抱き締められて、少し体の力が抜けた。どうやらいつも以上に緊張していたようだ、精神的にも肉体的にも。
くたりと古泉の肩に頭を乗せて凭れかかるとふ、と古泉が息だけで笑う。
古泉とこうして触れ合っていると、落ち着かないというか、どうしてもドキドキしてしまって、相変わらず緊張する。
そりゃあ押し倒されたときよりは力も抜けたが、でもやっぱり駄目だ。
ふ、と息を吐いて視線を下ろすと、古泉の服を掴んでいる手が震えている。
弱ったな、と思っているとその手を上から握られて、驚いてびくりと震えてしまった。
情けないというか、かっこわるいというか、それ以上になんだか古泉のことを怖がっているみたいで申し訳ない。

「こい、ずみ」
「怖がらせてすいません、もうしませんから」
「……いまは怖くない、ぞ」

俺の主張は苦笑に流されてしまった。
古泉は優しく俺の頭を撫でながらもういちどすいません、と謝る。
別に古泉は悪くないのにな。付き合い初めて3ヶ月だし、高校生だし、二人でベッドでいちゃいちゃしてればそれは当然そういう雰囲気にもなるだろうと云うか。未だに馬鹿みたいに緊張してしまう俺がおかしいのだから、そこまで配慮してくれなくてもいいのに。

「これからゆっくり、僕に慣れてください」
「……わかった」

付き合い始めたころにも同じことを云われたのを思い出して微妙な顔で頷く俺を見て、古泉は優しく笑いながら俺の顔を覗き込んでくる。

「そんな顔をしないで」
「っ、」
「愛してます」

触れるだけの軽いキスをしながらそう囁かれて、息ができなくなりそうだ。顔が熱くなるのが分かって俯くと、また優しく頭を撫でられる。
どうしようもなく古泉のことが好きで、苦しくなった。





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