いつだってなんだってアイツは本気で俺を愛してくれているしそれを全身で表現してくれる。
だから俺だってそれに応えようと思ったのだ。

「ハルヒ、話があるんだけどいいか」

澄み渡るような青空は夕日を反射させ橙に輝く雲が良く映えていて冬というのは実にいいものだと思わせる。
ハルヒは俺の唐突な呼びかけに怪訝そうな表情で何よとだけ答えた。
古泉も長門も朝比奈さんも俺が急にハルヒに話掛けたからいったいどんな内容なのだろうと固唾を飲んで見守っている。
そんな大した話じゃないぜ、と云うとそれなら勿体振らずに早く喋りなさい、と呆れた顔。

「俺、古泉と付き合ってるんだ」
「……は?」

一瞬の間のあと俺の発言を理解した古泉が椅子から跳ね上がるように立ち上がりしかし弁解の言葉も見当たらないようであーだのうーだの唸って目線を彷徨わせる。長門と朝比奈さんは、絶句してるな。
ハルヒは存外冷静にそう、と呟くと漸くパソコンから視線を上げた。

「いつから?」
「今日でちょうど1ヶ月だ」
「ちょっと報告が遅いんじゃないの?でもまぁいいわ」

あまり部活中にイチャつかないでよね、と優しく笑うと古泉に視線を向ける。

「古泉君、私は別に男同士に偏見ないわよ安心しなさい」
「あ、……えぇ、その、ありがとうございます」

困ったように笑い礼を云う古泉にハルヒは更に笑みを濃くする。

「私がキョンのこと好きだって知ってたからそんなにドギマギしてるの?」
「そ、それはですね、その」
「古泉君がキョンを好きだってことくらい、知ってたわよ」

馬鹿ね、と笑うハルヒに古泉は絶句する。
ああ、馬鹿だな古泉は。
ハルヒは古泉が思っている以上に慈悲深いんだ。
何せ神様だし。というのは冗談にしても、案外俺たちのことを見てるんだこいつは。
神様に許されない、と世界を守るヒーロー様が嘆いていたから、ヒロイン的立ち位置の俺としてはそんなことはないというのを証明したかったんだが、どうやら予想以上の効果を発揮したようで。

「幸せになりなさいよね」
「……おう」

幸せまで願われてはさすがの俺も少し感動だぜ。
古泉は今にも泣きそうだ。

「古泉君、返事は?」
「っ、は、はい!」

幸せにしてみせます!という古泉の決意は女子3人に笑われてしまった。
ハルヒに宣言してどうするんだ、俺に云え俺に。

「私じゃなくてキョンに云いなさいよ」
「す、すいません」

案の定ハルヒに突っ込まれて、古泉は目に涙をためて、俺の手を握った。

「し、幸せにしてみせますっ」
「分かった分かった、泣くなバカもの」

空いてる方の手で頭を撫でてやるとずずっと鼻水を啜った古泉がにへらと笑う。
ハルヒが呆れたように溜息を吐き長門がユニークと呟き朝比奈さんが優しく笑った。
あぁこれ、いいな。祝福されてる。他でもない神様に。
結構幸せだ。
祝福されるか罵られるか結構冗談抜きで世界やら命やらを賭けた暴露だったんだが、云ってよかった。

「古泉、幸せだな俺たち」

こんな展開もたまにはいいじゃないか。
辛いだけじゃない、悲しいだけじゃない。
世界は愛に満ち溢れているんだと、そう思ったっていいじゃないか。
なあ、古泉。



慈悲深い神様の大きな愛の話







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