キョン古



最近の古泉は嫉妬の塊だ。
提出が間近のレポートや課題、もうすぐ始まる期末テストに追われて構えない俺が悪い、んだろう。
今日はバイト帰りに偶然、ゼミの飲み会帰りのハルヒとばったり会った。
お互いの近況を軽く報告して、駅で別れたのだが、それを俺を迎えに来ていた古泉は見てしまったらしい。
僕なんかより彼女の方が良いんでしょう、と一通り俺に罵詈雑言(といっても幼稚園生のような可愛らしいものだったが)をぶつけて、それに後悔して泣きじゃくっている。

「っ…ごめ、なさ……」
「いいよ、誤解させてごめんな」

随分小さく見える古泉を抱き締めてくしゃくしゃと頭を撫でる。
まだ泣き止むまでに暫くかかるだろう。そう思ってもうすっかり慣れてしまった自分に苦笑した。
昔は泣かせると胸が痛くて痛くてしょうがなかったというのに。

「ごめんな、一樹」
「ぅ、え……?」

怯えたような顔で俺を見上げる姿に、へんな誤解をさせてしまったなと罪悪感が沸いた。

「泣かせてばっかで、ごめんな」

ぶんぶんぶん、と音がしそうな程に勢いよく何度も何度も首を横に振る。

「す、すき、…です……」
「あぁ、俺も愛してる」

相変わらず男にしては長い前髪に触れる程度のキスをしてやると元々赤かった顔が更に赤くなる。
もう何年も繰り返しているのに、未だに初々しいその反応が愛おしい。
顔と同じくらいに赤い首筋に触れるとびくりと震えた。

「熱い、な」
「うぅ」

片手で古泉を抱き締めたまま、もう片方の手を伸ばして近くの窓を開けると、昼の暑さが嘘のようなやや冷たい風が流れ込んできた。
ぼんやりと窓の外に目をやると星空が広がっている。それはごく当たり前のことだが、最近空を見上げる余裕もなかった俺は何だか驚いてしまった。新月だったこともあるのかもしれない。星の明るさが、何だか眩しい。

「一樹、来月はデートしような」
「っ、はい!」

相変わらず泣いていたがそれでも嬉しそうにくしゃくしゃの顔を更にくしゃくしゃにして笑う古泉の眦にキスをする。そうして何度も顔中にキスをしているうちに古泉もすっかり泣き止んで、俺にもっととキスをねだる。
触れるだけのものから深いものに徐々に変えながら、古泉をベッドに押し倒した。





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