(古)キョン古


世界が終わってしまったらどうなるんだろう。
ぼくと彼はばらばら?彼はきっと天国だろうけどぼくはかみさまを裏切ったのだから地獄行きだろうか。
けど世界が終わっても天国や地獄が仕事をするのか。世界中のひとが死んでしまうのに。
フル稼働のあの世を想像したらそれはとても大変そうだった。

「何だよ古泉考え事か?」

お風呂から上がった彼が髪の毛をわしゃわしゃと少し乱暴に拭きながら僕の隣に座る。
そしてテーブルの上に置いてあったもう冷たくも何ともない麦茶を飲み干した。

「世界が終わってしまったらどうなるのかなって思って」
「どうもこうもな、無になるんじゃねえの」
「無ですか」

人類だけが滅亡するってんならゴキブリとねずみくらいは生き残りそうだな、なんてのんびりと答えると面白くもない特番ばかりのテレビをつける。

「天国と地獄はどうなるんですかね」
「今生きてる人間全員死ぬんだったらそんな場所機能しなくなるだろ」
「そう思いますか?」
「ああ。だってどう考えたってキャパオーバーなんだから」

じゃあ人類が滅亡したらぼくらはどうなるんだろう。あの世が機能しないならやっぱり無になるのだろうか。
それはちょっと怖いな、と思った。
だって彼と一緒にいられないってことだから。
それはやっぱり、ぼくにとってみれば何よりも怖いことだから。

「ぼく、死にたくないです」
「…だーいじょうぶだ。まさかハルヒだって人類滅亡なぞ望むまい」

わしゃわしゃと僕の髪の毛を乱暴にかき混ぜて彼が笑う。
馬鹿なこと考えてんなよ、ととてもおかしそうに云うからこっちもつられて笑ってしまった。

「ねえキョンくん」
「ん?」
「もし死ぬときは」

一緒に死んで下さいね、という言葉は彼の口付けに奪われる。
ほんの少しだけ真剣さを取り戻した瞳が、僕を非難する。

「そんな先のことは考えなくていいんだよばか」
「…ごめんなさい」

ばか、ともう一度小さく云うと彼はとても優しく笑った。



もしもセカイが終わるなら

(どうか貴方の手で僕を――)





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