私の中のキョン君×古泉さん像
キョン君リーマン古泉さん女子高生です





自宅の寝室で深夜にこうして仕事用のパソコンに向かっているというのは何だか空虚だ。
何だって夜更けに仕事をやっているのだろうと思うね。しかし、背後でふんふんと調子外れな鼻歌が聞こえるようになった最近は、それも存外悪くないと思い始めた。

「ご機嫌だな」
「暇なんですー。仕事まだ終わんないんですか?」

ごろごろとセミダブルのベッドを転がりながら俺に文句を云うソイツは、しかしやはりご機嫌だ。先日プレゼントした肌触りのいい生地のうさぎのぬいぐるみを抱き締めて足をバタバタさせる。
甘えたような声でキョン君はやくーと云われて、思わず笑みが零れる。こうして待っててくれる奴がいるとモチベーションも上がる。

「あと20分くらいで終わるから、そしたら借りてきたDVD見ような」
「はい!早くして下さいね?」

今日は金曜日で土日と久々に2日休みを貰ったので古泉とのんびりする予定だったのだが、同僚のミスで俺は仕事を家に持ち込むハメになっていた。だから古泉は俺のベッドでごろごろしてる訳だが。
お詫びにもならないが、古泉の好きなアーティストの曲を流すと、また調子はずれな鼻歌が聞こえだした。耳心地のいいそれに耳を傾けながら仕事を再開する。時折背後から出されるちょっかいを軽くあしらいながらどうにか仕事を終えパソコンの電源を落とすと、古泉は嬉しそうにベッドから抜け出し俺に抱きついてきた。

「やっと終わったー」
「それは俺の台詞だ」

軽く鼻をつつくとんふふーと上機嫌に笑って俺の腕に自分の腕を絡めてくる。そしてそのまま俺を引っ張るようにリビングに行くとソファーに腰掛け、俺にも座るよう催促してくる。
それに従い隣に座るとあっと小さな声を上げた。どうした?と聞くと相変わらず上機嫌なまま立ち上がり、「コーヒー淹れますね」とキッチンに向かう。
それを見送りテレビをつけると、深夜帯と云われる枠のアニメが放送されていた。何だか独特の質感の、まるで和紙に絵を描いて色を塗ったかのような作画のアニメだ。薬売りという男が、あやかしとやらを切っている。何だか不思議な雰囲気のアニメだった。
お湯が沸いたヤカンの甲高く耳障りな音に我に返りキッチンを見ると、古泉がマグカップを用意している。何かお菓子も出すかと立ち上がると、それに気付いた古泉が不服そうに頬を膨らませ俺を制止した。

「キョン君はそこに座っててください。全部私がしますから」

お言葉に甘え、浮かせた腰をもう一度ソファーに落ち着けると、すぐにもとのニコニコ顔に戻った。どうもあいつは俺の世話をあれこれ焼いて女房の真似事でもしたいらしい。可愛いし有難いので好きなようにさせているが。

「はい、どうぞ」
「さんきゅ」

お菓子はこれでいいですよね?と古泉が此処に来るときに買って来たスナック系の菓子がテーブルの上に広げられた。チョコレートやポテトチップス、柿の種など、古泉に主張したことはないがどれも俺の好きなものである。
よく見てるものだと感心して頷くと嬉しそうに俺の隣に腰掛けた。
そしてDVDを再生しだす。
ずっと気になっていたホラー映画だった。大して怖くもなく内容もあっさりしたもので俺はそれなりに楽しめたが、古泉は怖かったらしく終始俺の腕にしがみ付き、時には俺の肩に顔を埋めたりしていた。それが可愛くてあまり集中できなかったが、口に出すと機嫌を損ねてしまうのでそれはやめておく。
次に古泉がずっと見たがっていたラブロマンスを入れて再生しだすと、今度は直ぐに引き込まれてしまったらしく俺の手を握りつつもずっと画面に見入っていた。終盤ではぼろぼろと泣き出してしまって、矢張り古泉が気になりあまり映画の内容は頭に入ってこなかった。2つの映画を見終えると既に外はうっすらと明るくなり始めていた。






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