ガッ、と鈍い音がしてそれから後頭部にやはり鈍い痛みがやってきた。どうやら壁にぶつけたらしい。けれど元から頬や腹や足や、兎に角全身が痛いから今更後頭部に痛みが加わったところでどうということはない。
意識が朦朧としているのも、大分前からだ。と思う。実際はどうなのだろう。どれくらい時間が経ったのか分からないが。
ぼやける視界の中で、彼が振り上げた腕を振り下ろした。そして頬に痛みが走る。
きっと真っ赤に腫れてるんだろう。それどころか口内は出血してるんだ。だって大分前から血の味がしてる。
痛みには慣れた。ただどうしようもなく零れる涙だけはどうしようもない。
何故泣いているのかなんて分からないけれど、でも彼だって僕を殴りながら泣いてるんだからおかしなことじゃないんだろう。
彼が僕を殴ることも、僕が大人しく彼に殴られることも、どちらもおかしくないのだから。

「古泉…っ」

また彼が振り上げた腕を下ろした。痛くは無い。だって痛みには慣れている。

「…っ、は……ぁ」
「こい、ずみ…」

彼が肩を上下させながら崩れ落ちる。
呼吸を落ち着けて、それから彼はいつものように僕を抱き締めた。

「きょ…く…」
「ごめん、ごめんな…っ」

謝る事なんてないのに。
けれど僕は何も云えない。口を開いても声が出ないから。これも、いつものことだ。
そしてやはりいつものように彼の温もりに安心して、僕は目を閉じた。






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