三日前、夢を見た。 まぁ、それだけだ。 ただの夢。 それだけの筈なのに、何かが胸に引っかかる。 朝起きたとき、胸が締め付けられるような深い悲しみを感じた。 あれは何だったのだろう。 耳に残っている、切なげに僕を呼ぶ甘く低い、誰かの声。 「古泉、こいずみ、ごめん、こいずみ」 何度も何度も僕の名を呼び謝罪を口にしていた。 彼は、一体誰だ。 僕は夢の中で彼と二人で電車に乗っていた。 何処かへ行く途中だったのか、それとも帰るところだったのか。 彼は窓の外を眺め、時々ふと思い出したように僕を見る。 そして、どこか苦しそうな顔を無理に笑顔にして、僕の名前を呼ぶ。 「なぁ、古泉」 ごめんな、と。 何度も謝る彼を、僕はただ抱き締めていた。 彼は一体、誰。 夢の中で僕は確かに彼の名前を呼んでいたのに、目が覚めたら思い出せない。彼の名前だけが、空白だ。 思い出そうとしても、思い出せない。 彼を、思い出さなくては。 せめて、夢の中の彼だけでも覚えていたい。 いや、覚えていなくては。 何故かそう思った。 それでも所詮は夢だからか、もう既に、彼の顔すら曖昧だ。 何度繰り返したか分からないが、僕は講義の合間に夢を反芻する。 夢の中の彼は最後に、何と云っていたっけ。 「古泉、」 「なぁ、古泉、」 「お願いがあるんだ」 (幸せに、なってくれよ。ハルヒと) --------------- 前サイトからうつすのを忘れていたもの |