会古でひたすらイチャラブしてます 別に僕は眼鏡フェチじゃないと思う。 でも、彼の眼鏡姿はカッコいい。煙草を吸うときだけ外すのも。と云うか、煙草を吸う姿自体がカッコいい。でもやっぱり眼鏡をかけてる彼が一番かっこいい。…今度眼鏡をかけたまま煙草を吸ってくれないだろうか。 そんなことを考えていると彼がふと顔を上げた。 「俺がカッコよくて見蕩れてるのか?」 「…貴方良く真顔でそんなこと云えますね」 強ち間違ってはいないけれど。しかしそうだと云うと調子に乗るので云わない。彼が調子に乗るとろくなことにならないから。 僕はだから睨みながら否定する。 勿論全く効果はない。寧ろ逆効果かも。 彼はにやにやと笑いながらそうか、と云うと立ち上がった。 仕事は終わったのだろうか。 「だからそんなに見詰めるな」 「見詰めてませんよ」 「無意識か」 全く質が悪い、だなんて云いながら僕の横に座ると眼鏡を外した。 あ、これはもしかしたらまずいかも。だなんて思う暇もなくキスをされる。 彼とのキスは嫌いじゃない。ただ煙草のにおいがするから好きでもない。 でも気持ちはいい。 彼の舌が入ってきて好き勝手に口内を荒らされるのは案外好きかも、なんて。 だって本当に気持ちいい。 僕は無意識に彼の背中に腕を回していた。 彼はそれに気を良くしたのか僕をそっとベッドに押し倒した。 「…ヤるんですか」 「何だ、嫌なのか?」 「貴方の部屋に来るといつもシてますよね」 僕だってそのために来てるんじゃない。ただ出来る限り一緒に居たいだけだ。 だからたまにはもっと高校生らしく健全なことをしても罰は当たらないと思う。 普通に勉強してみたり、DVD見たり、ゲームしたり、とか。 まぁ、そういうの彼は馬鹿にするんだろうけど。そう思いながら取り合えず自分の希望を彼に伝えてみる。 すると彼は予想に反しふーん、と云っただけだった。 意外、だ。それに絶対馬鹿にされると思っていたから拍子抜けした。 「ならDVD借りに行くか」 「僕見たいやつがあるんです!」 「俺はホラーが見たい」 ふ、と馬鹿にしたように云うってことは僕がホラー苦手なのを覚えていてその上で云ってるってことか。 本当に性格が悪い。何でこんな人間を好きなんだろう。 結局レンタルビデオショップで彼はホラーを借りた。僕の見たかったものも借りてくれたのでまぁ、取り合えず許す。 許すとか許さないじゃないけど。 最初に僕が見たかったものを見て、一息つく。 予想以上に面白かった。さすが長門さんがおすすめしていただけある。 邦画はあまり見ないのだけど、主役を演じていた俳優が良かった。ちょっと怖かったけど基本的にはホラーではないしストーリーも良かった。主演の俳優は狂言師が本業らしいが、彼ははまり役だったと思う。狐から生まれた、とされる安倍晴明を演じれるのは彼だけだろう。狐顔、と云うのはまさにこの俳優のだな、なんて一人色々と考えていると彼はさっさとデッキからDVDを取り出し彼が借りてきた方のディスクを入れた。 「…本当に見るんですか」 「あぁ、今度2も公開するらしいし丁度いいだろう」 何一つ丁度良くない。別に見たいと思わないし寧ろ見たくないのに。 そう抗議したところで彼は特にどうとも思わないらしくピ、とリモコンの再生ボタンを押しそのまま僕の横に腰掛けた。 結論から云うと相当怖かった。 て云うか全部見ることが出来た事が奇跡だと思う。制作費がたったの一万五千ドルだとか撮影現場は監督の自宅だとか編集は監督の持ってるパソコンだとかそういうことは関係ない。すごいけど、評価に値するけど。 あまりにも怖くて最初から最後まで彼の足の間で縮こまっていた。 彼がずっと手を握っていてくれたのでマシだったけれど、でももう二度とホラーなんて見るものか。 「そんなに怖かったのか」 「当たり前じゃないですか!」 怖すぎて泣いたのなんて初めてだ。 彼はそんな僕を見てくすくすと笑っているが笑い事じゃない。 少なくとも今日は一人で寝れなくなった。 全くどうすればいいんだ。 「泊まっていけばいいだろう」 「服持ってきてませんもん」 「俺のを着ればいい。どうせ明日休みだしな」 のんびりとそういいながら彼は立ち上がった。 パチッと音がして電気が点く。気付かなかったが外は真っ暗だ。 暗い中でホラー見てたのか…。 怖すぎる。 取り合えず何か気分の明るくなるものを見よう、とテーブルの上の新聞を手に取る。 金曜日の夕方と云うとニュースばかりなイメージだったけど12chはそうでもないみたいだ。 取り合えず教育番組のやっている3chを見ることにした。 丁度月光町という街を舞台にしたアレが始まったところで、そういえばこんな番組もあったなぁなんて思う。 彼は有名演歌歌手が歌っているOPを聞くと思い切り噴出したが、気にしない。 早く夕飯作ってくださいよ、と云うと俺はお前の母親じゃない、なんて云いながらオムライスを作り始めた。 前に僕が好きだといったのを覚えてくれていたらしい。 レタスのスープもつけると聞いて、割としっかりした夕飯だなぁと感心する。 僕一人だとコンビニ弁当ばかりで、時々ご飯を炊いてもおかずは納豆やふりかけで汁物はインスタントの味噌汁、なんてことが多いので純粋に感動した。 「ていうかまだアナログなんですね」 「お前の家はデジタルなのか」 「いえ、アナログですけど」 じゃあいいじゃねえか、なんていいつつ手は止めない辺りすごくいい主夫だと思う。 テキパキと手際よく動き続けている彼の手とそれからテレビとを交互に見ているうちに夕飯が出来上がり。 テーブルに並べるのだけ手伝うと息子みたいだな、なんて彼が笑う。 「僕たち親子ですか」 「それも悪くないな」 することしてるのに、なんて云えばそういう親子もいるだろ、なんてさらりと云うもんだからいる訳ないじゃないですかと否定しながら咽てしまった。 そうやって二人でご飯を食べて、暫く休んでから二人でお風呂に入った。 流し合いっこをして、湯船で少しふざけて、ベッドでいちゃいちゃしながらテレビを見て。 とても新鮮だ。彼とは何をしていてもいつも不健全な流れになってしまうから。 彼もこういうのも悪くないな、と云ってくれたので安心した。 「こーゆーの、僕は好きです」 「そうか、俺も嫌いじゃない」 優しく笑いかけられて、何だか恥ずかしくなって視線を逸らす。 普段はにやりとしか笑わない癖に、どうしてこういうときだけそういう表情をするのだろうか。 顔が熱くなるのが分かって僕は顔に手を当てる。思いのほか熱い。どんだけ照れてるんだ僕は。 上でくすくす笑う声が聞こえたが僕は全然それどころじゃなくて取り合えず腹を殴っといた。 あまり力入ってなかったし効果はないみたいだけど。 「もう、いつまでも笑ってないで下さい!」 「悪い」 「悪いと思ってないでしょ貴方」 「あぁ、まあな。いいから寝るぞ」 んじゃ、おやすみ、と彼はあっさり寝てしまった。 おやすみ三秒っての○太君ですかこの人は。 僕ははぁぁ、と溜息をついて目を閉じた。 |