会社帰り、夕飯を確保するために立ち寄ったコンビニ。 そこで僕は、今まで同じ地区に住みながら擦れ違う事すらなかった彼と再会した。 「久しぶりだな、古泉」 そう笑った彼は相変わらずで、しかし目尻のしわが僕たちの間に流れた時間を思い知らせる。 僕たちはもう大人になってしまった。とっくにお兄さんなんて年は過ぎていて今は紛れもないおじさんだ。 じゃあ俺弁当買ったら帰るから、そう云う彼の腕を思わず掴み、咄嗟に「折角ですから飲みに行きませんか」と誘う。 彼は少し迷ってからじゃあ家に来いよと云ってくれた。 彼の家に行くと彼の奥さんが僕を出迎えてくれた。 「あらいらっしゃい古泉君」 そういってその女性は微笑む。 高校時代から変わらぬ、綺麗な笑顔。昔はただ彼女が憎かったというのに。 「お久しぶりです涼宮さん」 今は彼女の姓は涼宮ではないがそれ以外に何と呼べば良いものか分からず、結局高校時代の呼び名となってしまった。 涼宮さんに案内されリビングに入ると其処には少々豪華な料理が並んでおり、僕は思わず嘆息する。 彼女はそんな僕の反応に「たまには自炊しなきゃ駄目よ!」と云って笑った。 相変わらず良く笑う。 えぇ、まぁ、と曖昧に返事をすると彼女はたまにはうちに来ても良いのよと云った。 「ありがとうございます」 「だって心配なんだもの。ちゃんと食べてる?」 「えぇ、まぁ一応コンビニ食ですけど」 「駄目よそれじゃあ!」 やっぱり心配だわ、という彼女の呟きに何が心配なんだよ、と彼がネクタイを緩めながら云う。 どうやら今まで自室の方に居たようだ。出で立ちはほとんど変わっていないので恐らく鞄とコートを置いてきたのだろう。 そんな彼に涼宮さんは古泉君の食生活よ!と答える。 彼はその言葉にあぁなるほどなと相槌を打って笑った。 結局十二時ごろまでお邪魔してしまった。 彼らは泊まっていけばいいのにと云ってくれたが其処まで十数年ぶりの再会でそこまで厚かましくはなれないので丁重にお断りした。 泊まりたいとも思えなかった。 久しぶりに彼に会って、僕は彼を好きだと思ってしまったから。 彼が涼宮さんと結婚する、と云ったときに諦めたはずだったのにどうやらまだ諦められなかったようだ。 そう云えば彼らと会わなくなったのはそれが原因だったなと苦笑する。 二人はとても幸せそうで、僕だけが立ち止まったままで。 一体何をしていたんだろうか。 それでも再会が嬉しかったことに変わりはない。 それに涼宮さんのまた来なさいという言葉に素直に頷くことが出来たのだから、少しは前進できているのかもしれない。 それでも矢張り、告白はしたかったなぁ。 そんなことを考えながら僕はベッドへ倒れ込んだ。 できることならもう一度 (高校時代に戻りたい)(そうしたら、貴方に伝えるのに) |