涼宮さんの知っている優等生の「僕」と、本当の「俺」は全く違う。
口調も、一人称も。
立居振舞はもう癖のようなものだけど。
本当の自分を隠し通すのは中々難しくて、彼と付き合い始めてからは彼の前ではもう自分を作ることはしていない。

「なぁ、古泉」
「ん?何?」

普通に返事をしたにも関わらず、彼はかなり微妙な表情になった。
敬語でない事が未だに気になるらしい。
俺は溜息をついて言った。

「嫌なら敬語に戻すけど」
「いや…。別に良い。嬉しいから」

良く分からないことを言うと、彼は読んでいた雑誌に視線を戻した。
おい、俺に用があったんじゃないのかよ、と思いつつ聞くことはしない。
どうせ大したことじゃないだろう。
大事な事だったら途中でやめたりしないタイプの人間だから。
そんな事を考えながら俺も読んでいた本に視線を戻した。





ハルヒの知っている優等生の「古泉」と、本当の「古泉」は全く違う。
口調も一人称も。
立居振舞はもう癖のようなものらしいが。
如何やら本当の自分を隠すのは中々に難しかったらしく、俺と付き合い始めてからは俺の前ではもう自分を作ることはしていない。

「なぁ」
「ん?何?」

普通に返事しただけの癖にこんなにカッコいいのは何でだろうな。
不覚にもときめいちまった…。
それがバレないように苦心していると、俺は一体どんな表情をしていたのか、古泉は溜息を吐いて言った。

「嫌なら敬語に戻すけど」
「いや…。別に良い。嬉しいから」

本心だ。
ちょっとイチイチときめく自分が忌々しいだけで別に古泉が素を見せてくれる事自体は嫌じゃない。寧ろ嬉しい。
取り敢えず、雑誌に視線を戻して、思考を少し前に戻す。
ってか、普通に返事しただけで何であんなにカッコいいんだ?
いつもより少し低く、決して丁寧とは言えない口調は、敬語で紳士的な古泉からは少し掛け離れている。
初めて古泉の素を知った時は、よくもあそこまで完璧に演じられるもんだ、と驚いたと同時に尊敬した。
そんなトコも好きだけどな。
うわ何考えてるんだ俺、ハズッ!
とか思いつつ雑誌を横に置いた。



本を読んでいると、彼が雑誌を置くのが視界の隅に見えた。
俺も本を置くと、目が合った。

「?」
「なぁ、古泉」
「何?」
「さっきの続きさ」

そう言いながら近付いてきて、最終的に俺の足の間に座った。
それから置いてある本を手に取りパラパラと中を見ながら喋る。

「お前の素知ってるのって俺だけ?」
「え、あぁ、そう…だと思うけど?」
「ふぅん、そっか」

用件は済んだのか、満足そうに笑うとそのままリモコンに手を伸ばしテレビをつけた。
一体なんだったのか、と思ってると、テレビを見ながらポツリと。

「俺ってトクベツだよな?」

と聞いてきた。
あぁ、そう云う事が聞きたかったのか、と苦笑する。
後ろからだと耳まで赤いのしか見えない。きっと正面から見る顔は相当可愛いに違いない。
そんな事を考えながら、勿論、と答えると、そっか、と嬉しそうな声が聞こえた。
ほんと、可愛いな、と思いながら抱き締める。

「な、何だよ」
「別に。可愛いなと思って」
「っか…、」
「可愛いよ、お前」
「〜っ!!」

真っ赤になって何も言えなくなった彼の項にそっと口付けた。
思わず笑みが零れてきた。
あぁ、こういうのが幸せ、って言うのだろう、なんて思う。






本当の自分を受け入れてくれる人が、本当の自分を愛してくれる人が居るこの世界を守るために戦うのも悪くは無いかも知れない。