「なぁ、古泉」

彼の少し低い、心地良い声が僕を呼ぶ。
少しだけ首を動かしてそちらを見た。

「何ですか?」
「不安か?」
「え?」
「不安か?」

意味が分からない、と目で訴えると彼は少し間を置いてから

「俺に愛されてるか不安か?」

と聞いた。
図星だった。
涼宮さんが彼を好きなのは一目瞭然だったし、彼自身満更でも無さそうな雰囲気だったのだ。
本当に僕が彼の恋人で良いのか不安で仕方無い。
でもなんと答えれば良いのか分からなくて、困ったような笑いになってしまった。彼はそれを肯定と受け取ったらしく苦笑した。

「そうか。まぁ仕方無いっちゃあ仕方ないがな」
「…すいません」

そう謝るとまた苦笑が返ってきた。

「気にすんな。そんなの普通だろ」

少なからず不安になるのは何も男同士のカップルだけじゃないしな、と彼は苦笑を微笑に変え、言った。
それから、真顔になると。

「俺はお前に愛されてる自信がある。そんで、お前を誰にも負けないくらい愛してるって自信もある」

だから、彼はそこでいったん切った。
そしてしっかりと僕の目を見て。

「不安ならちゃんと俺に言えよ」

他の奴に相談するんじゃなくて、と言われぽかんとする。
そう言えば長門さんに時々話を聞いてもらっていた。
そのことを言ってるのだろうか。
それに何故そんな事を言うのだろう。
そう不思議に思っていると彼は再び苦笑した。

「やきもちだよ。嫉妬。俺とお前の事なのに長門に相談したのがショックだっただけだ」
「あ…、すみません…」

あなたに言うのは申し訳ない気がして、と言うと、恋人なんだから変な遠慮はするな、と怒られてしまった。
でも、僕は何だか嬉しかった。
すごく愛されているのだと実感が出来たから。
だけど、やっぱり長門さんに相談するのはやめられないな、と心の中で思った。