今日、部活に来てからの彼の態度がおかしい。 と云うか何処までも不機嫌だ。涼宮さんにもそれを気付かれてしまうぐらいに。 僕を視界に入れようとはしないから原因は間違いなく僕だ。 彼が理不尽に怒る事は滅多に無いから、きっと知らぬ間に彼を怒らせてしまったのだろう。 そう思い、考えてみるが原因が分からない。 今日はいつも通りだった筈だ。 少なくとも二人で屋上でお弁当を食べた時は機嫌は悪くなかった。いや、寧ろ良かった筈だ。 となるとその後に原因があることになる。 でもそのあとはもう部活だけ。部活に来ていた時には既に機嫌が悪かったから…。 だめだ、分からない。
そんな事を考えている内に部活も終わり、五人でいつものように坂を下る。 前で女性陣は楽しそうに何やら話しているが、彼は矢張り無言のまま。 機嫌が悪いというよりは落ち込んでいる、と言ったほうが正しいだろうか。 唇を噛み締めて今にも泣きそうな表情で、時折何か言いたげに此方を見るが直ぐに俯いてしまう。 どうしようか。 困っているうちにいつもの分かれ道。 「じゃ、キョン、古泉君。また明日ね!キョン、機嫌直しなさいよ!」 「じゃあ、また明日」 「……」 涼宮さんは長門さんと朝比奈さんを引き連れ颯爽と去っていった。 「キョン君」 話しかけても返ってくるのは無言で、思わず溜息を吐いた。 その時、いきなりキョン君が泣き出した。 「え…」 「…っ……」 どうすれば良いのか分からず、取り敢えず家に連れて帰る事にした。 家に着いても一向に泣き止む気配は無く、寧ろ先程よりも泣いていると云うか。 「キョン君、どうして泣いてるんですか?」 そっと抱き締めて背中を擦りながら出来るだけ優しくそう問いかける。 彼は答えようと口を開いたが、漏れるのは嗚咽ばかりで言葉にならない。 彼が落ち着くのを待って、もう一度理由を聞く。 「僕には貴方が何故泣いているのかが分かりません。理由を教えてもらえますか?」 「…っ、こぃず…が……たのしそぅ、に…女の子……と………はなしてた…から…っ……」 「それはいつ?」 「…五時間目と六時間目の間……」 辞書借りに行ったとき、と小さく言った彼にやっと納得が行く。 成る程、それで不機嫌だったのか。 と云うことはそれはつまり。 「やきもち、ですか?」 「…っ」 恐々と僕を見て小さく頷く彼を強く抱き締めた。 何だろう、この可愛い生き物は。 頭を撫でてあげるとぎゅ、とブレザーを握ってきた。 「可愛いなぁ、もう…」 と思わず呟くと驚いたように目をぱちくりとさせ、それから耳まで真っ赤になる。 ヤバイ、コレは冗談抜きで可愛い。 僕の理性が大分際どい。 残り少ない理性を総動員させて欲望を押さえ込みつつ、彼と視線を合わせる。 「嬉しいです。やきもち、妬いてもらえて」 「…っ、俺は嬉しくない」 真っ赤なまま怒ったようにそう言う彼に思わず頬が緩む。 「…なに話してたんだ?」 不安そうにそう聞いてくる彼に、どうしようか考える。素直に答えると怒られるような気が…。でも答えなければキョン君が不安になるのか…。 怒られる事を覚悟で素直に言うことにした。 「貴方の事ですよ、キョン君」 「おれ…?」 「はい」 「ばっ、馬鹿だろお前!!」 そう怒鳴る彼は何処か嬉しそうで、言うほど怒ってない事が分かった。 本当に可愛いな、どうしよう。 そんな事を考えてると、ちゅ、とキスをされた。 「え、キョン君?」 「べ、別に意味なんてないぞ!!」 ただしたくなっただけだ、なんてだめですよそんな事言ったら。 本当、押さえられなくなったらどうしてくれよう。そんな事を考えながら今度はこちらからキスをした。
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