名前は『皐月(サツキ)』で固定。
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佐助は真田に仕える忍。
じゃあ、あの忍は………?


「皐月と申します」


武田に仕える忍だ。
今は一時真田に仕える身。




「それで?」

「?」

「皐月のこと、どう思ってるの?」


佐助が訊いた。

どう、ときかれてもうまく答えられない。
そんなこと、考えたことも無いからだ。


「わからない
ただなんというか、苦しいというか…」

「………。
ほんと鈍いねぇ、旦那は」


「どういう意味で……」

「自分のことなのにさ、」


自分のことでもわからない時がある

周りからしかわからない事がある


佐助から見れば幸村の気持ちが丸わかりなのだ。

確かに何かと『破廉恥、破廉恥』と言うし、色恋沙汰なんて経験ないと思うけど。


そう、彼は皐月に恋心を抱いている。
佐助にはそう見えた。


応援したい気持ちもあるけれど
あまり勧めたくない気持ちもある。

皐月は忍で、いつ死ぬかもわからなくて。


それに、かすがのようになってほしくない。
彼女は一途に上杉謙信を想う故に、暴走することもある。

彼女は忍に向いていない。


だけど皐月は、忍。
惑わされないで、その手も瞳も汚れてるのに、真っ直ぐだから。

つまりは佐助も、認めているということ。


皐月に愛する人ができてしまったら、どうなるんだろう。
幸村を弱点にするような、そんなやつになってしまうのだろうか。


「とりあえずさ、皐月と話してみれば?」


そう言うと幸村はゆっくり頷き、立ち上がった。
襖を開けてその部屋を出ていく。


今日も小鳥が囀り、青空が広がっている。
彼女を探すのは難しいことじゃない。

いつも、大抵場所は決まってる。


「あ、幸村様」


ほわほわした喋り方。何も考えてなさそうなのに。
本当に忍?ってくらい。

屋根の上にいつも彼女はいる。
そこで日向ぼっこをしてるんだって。
そう言ってた。


短い髪が風にそよいだ。
画になるお人だ。


「幸村様も『日向ぼっこ』でございますか」

「あ、あぁ…」


そうですか、と明るく微笑む。
太陽みたいに輝いて、自分の炎なんて負けてしまうんじゃないかってくらいに。

幸村は目を逸らした。
見てられない。困ったような気持ちになる。

隣に座ると、皐月が言った。


「今年の冬は寒くなるそうですよ」

「そうで、ござるか」

「ええ
奥州はもっと寒いでしょうね」


政宗殿の事を言っているのか。

確かに、ただでさえ北国なんだから。
…だけどあの男なら、大丈夫な気がする。

しっかり家臣がついているし。
風邪をひいたとしても、ちゃんと看病するに違いない。


「幸村様?」

「?」

「何かあったのですか」

「…何故そのように思われる?」

「元気が、無いから」


今日は槍、振ってないでしょう?


「今日は貴方様の炎を、見ておりません」



ああ、この人は。
なんて鋭いんだろう。


「…某にもわからぬのです
ただ、苦しくて」


心が、締め付けられるようなのです。



「では、その苦しみ
この皐月に話してみて下さいませ

何も無いのに胸が締め付けられるのは
何か悩んでいる証拠です

幸村様が楽になる方法を私と考えましょう」


優しい言葉に幸村は顔を上げた。
輝くような微笑みを、また向けている。

目が合った。
すると何か奪われたような気持ちになって。


わかった気がした。

何もかも。



「は、破廉恥でござる!」

「え!?破廉恥ですか」

「あ、いや、」




目を見たら負け



恋は破廉恥?








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初、幸村夢。
片思いな幸村のお話。
以前から考えてたストーリーです