「鷲巣。大丈夫か?」

「何度ももう無理だと言ったじゃろうがっ……!見ての通り疲れ果てたわ!」


情事後、悲鳴を上げそうな身体を押してシャワーを浴び、グッタリとしたままキングサイズのベッドに横たわった鷲巣。そんな様子を見て、アカギはベッドに腰掛け労わりの言葉を掛けるが逆効果のようだった。

「あらら……」と呟き、少し楽しそうに口元を緩めたアカギ。鷲巣はそれをジロリと睨み付ける。上着を放ったまま煙草を吸う彼は、引き締まった体躯を惜しげも無く晒していた。張りがあり、白い素肌。つい先程まで触れ合っていた、柔らかく滑らかな感触を思い出して顔が熱くなるのを感じる。


その若さを羨み、時には妬ましいとすら思った。自身の「死」を恐れる余りに理不尽に当たってしまうこともある。しかしアカギは怒りもしなければ、恐怖する鷲巣を笑いもしなかったのだ。


ぼんやりと考え事をしていると、いつの間にか煙草の火を消したアカギがベッドへ潜り込んでいた。目の前に迫る胸板に軽く触れると、アカギは意外そうな顔をして手を伸ばすが、鷲巣はその腕を軽くあしらってしまう。


「若い貴様にはわからんだろうがな……少しくらい、ワシにその若さを譲っても構わんのだぞ?」


からかうように言う鷲巣だが、そこ顔には僅かに暗い影が見える。


「……譲れるもんなら、とっくに譲ってる。今はそんな話するな」


アカギは珍しく不機嫌そうな声色で答え、鷲巣を力強く抱き締めた。
赤木しげるは自分の死を恐れない。それなのに、自分の死をこんなにも恐れている。不思議なものだ、と鷲巣は小さく笑った。


「何で笑ってる……?」

「ふん、黙っとれ。もう寝るぞ」



青年は抱く力を少し緩め、老人はその胸へ頭を押し付けた。

穏やかな時に身を任せれば任せる程、緩やかな死が迫ってくる。心地良い微睡みの中。それでもこの時間、今一瞬の幸福の中で永遠に生きたいと願う。


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