アカギはいつもふらりと現れては矢木の家に入り浸っていた。
今日も特に会話をする訳でもなく居座っている少年をもはや追い出す気も持て成す気も無い矢木は、ぼんやりと煙草を吸っている。
「…矢木さん、やめて」
「は?」
突然ずっと黙っていたアカギが顔を顰めて言えば、矢木はなんのことか分からない、と怪訝な顔をする。
「それ。…煙草」
「あぁ」
どうやら矢木の煙草が気に食わなかったらしい。喫煙者でないアカギには側で煙草を吸われるということがストレスになったようだ。
「お前、なんだかんだ言ってもまだまだガキだからなぁ」
ニヤニヤしながら言う矢木に、アカギはむっとする。
「馬鹿にしてるの」
「いいや?思ったことを言っただけだ」
矢木自身大人気ないとは自覚しつつも、ついつい調子に乗ってしまう。
普段子供らしくない発言と行動ばかりしているのに煙草を嫌がる、というのがなんだか新鮮だった。
「ま、お前も大人になりゃあ良さがわかるさ」
お子様は菓子でも食ってりゃいい、と矢木は笑い、まだぶすっとしているアカギを見て満足気に煙を吐き出した。
数日後。
「矢木さん、いる?」
数日ぶりにアカギが矢木の家に来た。
玄関からしたその声に、前回のことで少し機嫌の良い矢木は快く鍵を開けてやる。
瞬間、視界が真っ白に染まった。
「っ!?げほっ…な、」
「もうガキじゃないから、ね」
そんな台詞と共に開けた視界に映るのは不敵に笑むアカギ。
…その手には、煙草。
矢木は顔が引きつるのを感じながら、意外と根にもつタイプらしいこの白髪の少年に返す言葉を模索するのだった。
揺蕩う白
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時々子供らしさを見せるアカギって可愛いと思うんです。
矢木さん好きだからもっと書きたい!