言葉だけで語る愛とかさ、ホントくだらないよね。
そう目の前の男は言う。
その発言は、「本当に俺を愛してるの?」という問い掛けに対し「あぁ、愛してる」と迷いなく答えた俺へ吐き捨てられたものだ。
今までにも幾度となく繰り返されてきたやり取りから予想はしていたものの、落胆してしまう。やっぱりこいつはわかっていない。ギロリと睨め付ければ、虚ろな目で笑っている和也と視線がかち合った。なんだよ、その目は。少しくらい俺を信じろよ。そう怒鳴りたくなるのをグッと堪える。
「俺だったらさ、カイジの為になんでもしてやれるよ。
金だって名誉だって俺の体だって喜んで差し出せるんだぜ?」
……そこまで想ってくれているのか、などと悠長に構えてはいられないのだ。和也は本当にそれを実行してしまう男なのだから。
そして歪んだ愛情の見返りにはやはり歪んだ愛情を求められるもの。
俺にはそれが苦しかった。
「なぁ。その腕落として俺にくれよ、カイジ。脚でもいいよ。
俺が好きなんだろ?愛してるんだろ?
俺の言うこと、きいて。
俺の為に、なんでもして」
……可哀想なヤツだ、と思う。
「誠意」を信じられないお前の親父と同じだ。行為で証明しろって、そればかり言う。
今まで媚びてきた奴らは、お前を愛していたか?違うだろ。お前が欲しいのは、そうじゃないだろ。それこそ過剰な「パフォーマンス」だ。
目に見えないからこそ、それは意味を持つというのに。
「……馬鹿言ってんじゃねぇよ」
それでも俺はただ拒絶することしかしない。そんなことを言ったところで、和也は理解出来なかった。いや、理解しようとしなかったんだ。これまでも何度争ったかわからない、ただお互いを好きだというだけなのに、こんなにも上手くいかない。和也は自分の認識の誤りを知ることを、何よりも恐れている。
こいつにとっては目に見える物だけが真実。
ずっとずっと、そう思って生きてきたのだろう。
和也の目からポロリと涙が零れる。
ほらやっぱり出来ねぇんだろ、俺は誰からも愛されない、そう喚く和也をもどかしさと一緒に力一杯抱き締めた。遅かった。出会うのが、遅過ぎた。
人を信じられないお前は一生愛されていることに気付かない、気付けやしない。