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私INザバン市。
ただ今某定食屋の目の前にやって来ている。
「……はぁ」
拝啓、蜘蛛の皆様。
俺ことクロロ=ルシルフルはイルミ=ゾルディックに拉致られてハンター試験を受ける事となりましたがソチラはいつもと変わらずお過ごしで…
「ねえ、まだ怒ってんの?」
「…別に」
俺の回想をぶった切るイルミの声。
怒ってないって言ってんのに「ほんとはまだ怒ってるんだよね?え、怒らないでよ。どうしたら許してくれるの」と棒読みで矢継ぎ早に聞いてくるので、落ち着けとデコっぱちを叩いた。
「痛いよクロロ」
「怒ってないと言っているのにお前が鬱陶しかったからな」
「酷いや………それなら何で溜め息吐いてたのさ」
ヒドいはお前だ、何仕返しなの?殴り返そうとしてきたのでそれを叩き落とし、しかしイルミはめげずにまた手を伸ばし……そんな攻防を一瞬で行った。こんなところで無駄にハイスペック身体スキルを披露してしまったぜ。
「いや、さ…『イルミ』が試験を受けるって事は原作なんだろ?確か。そこに俺が居ても大丈夫かなって…」
「んー…」
じゃれあい(という名のど突き合い)から切り替えて溜め息の理由を返す。
相変わらずの無表情でイルミは考え込み、
「そうは言うけど『幻影旅団』がクルタ族を襲ってないって時点で原作とは違うんじゃない?」
ぽつっと言った。
「あ」
そういやそうだった。俺別に人体収集とか趣味じゃないし、そもそも虐殺だとかそんな野蛮な真似したくないしでクルタ族襲撃なんてしてないんだよ。詳細なんて忘れたけどコレって主人公格のク…誰だっけ?まあ何某に関わる出来事だったはずだよな。場合によっては襲撃がなくなった事でその何某が試験を受けない可能性もあるワケだ。
「もう原作から逸れてるかも知れないし…それならクロロの試験の参加なんて些細な事だって」
「うーん…言われてみれば、そうだ、な…?」
「うん、納得した?」
「ああ」
「そ。じゃあ早く中に入ろ」
…もしかして俺言い包められた?
俺の手首を引っ掴んで喜々として定食屋に入っていくイルミの姿にそんな思いがよぎった。
店内に入ると、
「いらっしぇーい」
威勢のいい掛け声。それと同時に注文を聞かれる。
「「ステーキ定食、弱火でじっくり」」
俺とイルミの揃った声が店の中に響いた。

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