06.心悸

「三成!ワシと義兄弟の契りを結んでくれっ」
「……は?」
言った、言ったよ…言っちゃったよ…!
どうしよう、これで三成に微妙な顔されたらワシ明日っから生きていけない。鬱だ死のう。


いきなりの展開すまねえ。
ただ想っているだけで…とか、遠回しにアプローチを…なんてワシには無理だ。
三成への気持ちを自覚してから奴への気持ちが溢れて抑えられなかった。
そんなワケでついに今日、三成と顔を合わせた途端感情が暴発の末にとんでもねえ事を口走ってしまったらしい。
今はもう被告人席で判決を待つ気分だ。胃が痛え。
裁判官三成はいつも通りのむっすりとした顔で何を考えているか分からない。
「……」
「………」
「…………あの、」
何か言ってくれよ。
黙ったままの三成は唐突にハッと何か思いついたような顔をして、
「いいぞ」
「そうかやっぱりダメ……へ?」
……どうも今日は耳の調子が悪いようだ。
よし、こんな時はさっさと三河に引き蘢って寝るのが一番だな。
さて忠勝を呼んで……え?
「いいと言っている」
「ぅ、え!?おめぇそれマジで言ってんのか!?」
あ、今すげえ声裏返った恥ずかしい。
「ダメだったらいいと言わない。しかしアレだな、そうなると私がエースで貴様がサボだぞ!」
あ。
あーあーなるほどそういう事か。なんか泣きそう。
「ルフィがいないのが残念だが…………家康どうした頭なんか抱えて」
「いや、何でもないよ…何でも」
三成は小悪魔っていうより悪魔だ、鬼畜だ、上げてどん底まで叩き落としやがった。
怪訝な顔に何とか笑みを作って返す。
あー、何て言ったっけ?確か三人まとめて盃兄弟とか言うんだったよな、と昔の記憶が顔を覗かせる。
ワシはそーゆう行為って言うかずばり衆道そのもののつもりで言ったが、三成はただ単に兄弟の盃を交わすって捉えたようだ。まあそれでも間違ってはないけどね!むしろ桃園の誓いの例を引くまでもなく酒飲む方が一般的かもな!
あははははー…はあ…こんな所に認識のズレがあったとは…何たる落とし穴。
「まさか今さら撤回する気かッ私を裏切るつもりか家康ゥゥッ」
「ち、違う、そうじゃない!そうじゃないから落ち着け三成ぃっ!」
何でこれワシが怒鳴られてんだ。理不尽じゃない?


三成が分からなかったのが安心したような残念なような。

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